2009 Fiscal Year Annual Research Report
遠方銀河団の多波長観測による宇宙の質量集積史と星形成史の解明
Project/Area Number |
08J08678
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 佑世 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 銀河 / 銀河団 / すばる望遠鏡 / あかり衛星 / 星形成 |
Research Abstract |
本年度は、主にすばる望遠鏡の近赤外線観測装置MOIRCSの狭帯域フィルターを用いた、RXJ1716銀河団領域(赤方偏移0.81)の広くて深い、Hα輝線サーベイを行った。Hα輝線(静止系6563Å)は、銀河の星形成活動を知るための有力な指標であるが、赤方偏移0.5を超えると近赤外線域に赤方偏移してしまうため、大規模なサーベイを行うことは困難であった。本研究では、赤方偏移0.81のHα輝線がちょうど夜光の谷間(1.19μm)に入ることに着目し、遠方宇宙の銀河団領域において初めて、銀河団中心領域だけでなく銀河団周辺の大規模構造までカバーした広大なHα輝線サーベイに成功した。解析の結果、Hα輝線の強い銀河は、銀河団中心をきれいに避けて存在していることが分かった。これは、前年度に明らかにした、あかり衛星による中間赤外線で明るい銀河の分布ともよく似ていた。しかし、個々の銀河について、Hα輝線・中間赤外線を用いて独立に星形成率を求めてみると、多くの銀河についてはHα輝線のダスト吸収量は近傍銀河で知られる一般的な値を示したのに対し、なかにはHα輝線で求めた星形成率が赤外線で求めた星形成率の20分の1程度しかないものもあった。しかもそのような銀河は赤い色をしており、中間赤外線のデータがなければ星形成活動の弱い銀河であると誤認してしまう可能性のあるものである。さらに興味深いことに、このような「隠された」活動性を示す銀河は、銀河団の周縁部に特に多く存在していることを発見した。本研究の結果は、過去の宇宙における銀河団銀河の形成・進化の過程と、スターバーストやAGNのような銀河の隠された活動性が密接に関連している可能性を強く示唆するものである。
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Research Products
(15 results)