2010 Fiscal Year Annual Research Report
遠方銀河団の多波長観測による宇宙の質量集積史と星形成史の解明
Project/Area Number |
08J08678
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 佑世 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 天文学 / 銀河 / 銀河 / すばる望遠鏡 / 星形成 / 環境効果 |
Research Abstract |
我々は、1年目および2年目までの研究で、遠方銀河団周辺部に存在する銀河群やフィラメントのような、銀河団とフィールドをつなぐ中間的な環境が、銀河進化を理解するための重要な環境である可能性を示してきた。そこで、「環境効果」をさらに深く理解するために、30分角という広い視野をもつすばる望遠鏡のSuprime-Camを用いて、Abell851銀河団(赤方偏移0.41)の広視野Hα輝線銀河探査を行った.我々は、赤方偏移0.4のHα輝線を捉えることができるNB921フィルターと、BVRIz'バンドの撮像データを組み合わせ、観測視野内に445個のHα輝線銀河(星形成率でおよそ0.1Msun/yr以上をもつ)を同定した。そして、それらが測光的赤方偏移の手法によって示唆されていた大規模構造に沿うように分布していることを示した。なかでも、我々が注目したのは、赤い色(B-I>2)を示す星形成銀河の存在である。このような赤いHα輝線銀河は、ダスト赤化を強く受けた星形成銀河と考えられ、青い銀河がその星形成活動を終えて赤い銀河へと進化する、まさに進化途上の銀河であると考えられる。興味深いことに、このような赤い色を示すHα輝線銀河が、銀河団から遠く離れた銀河群環境に集中して存在していることを発見した。一方で、銀河団に近い領域(1メガパーセク以内程度)には、赤いHα輝線銀河はほとんど存在しない。この結果は、銀河群環境でダストを伴った星形成活動が特に多く誘発され、銀河の性質変化が引き起こされていることを強く示唆している。我々の3年間の研究を通して、遠方宇宙における「銀河団周辺環境」の重要性がはっきりと見えてきた。特に、ダストに隠された活動性を見落とさない観測(輝線銀河探査や中間赤外・遠赤外線によるサーベイ)が今後ますます重要になると考えられ、本研究はその足がかりとなるものである。
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Research Products
(10 results)