2009 Fiscal Year Annual Research Report
イネ品種における花成時期の多様性をもたらす分子機構の解析
Project/Area Number |
08J08771
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 靖幸 Nara Institute of Science and Technology, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | イネ / 花成 / 光周性 / 多様性 / 自然変異 / 塩基多型 / 穀物 / 栽培化 |
Research Abstract |
イネは約8000年にわたる栽培化および農業育種の過程により様々な遺伝的な変化を生じた。このうち花成時期の多様化は本来熱帯性の植物であるイネにおいて稲作地域の拡大や育種技術の発展に貢献した重要な形質の一つである。我々はこれまでに、64品種からなるイネコアコレクションを用い、花成時期の多様性をもたらす原因の同定を試みた。この結果、Hd3aの発現量と花成時期の間に品種間で強い相関関係があることを見出した。さらにイネ品種間でのHd3aの発現量の違いはその上流因子のHd1における塩基多型が主な原因である事を明らかにした。 この結果を踏まえ、我々は38系統のイネの祖先野生種(Oryza rufipogon)を用いた比較解析を行う事で、分子遺伝学的な観点から栽培化に伴う花成時期の多様化の変遷に注目した。これまでに代表的な祖先野生種におけるHd1のシークエンス解析を行った結果、栽培イネで見られたような機能欠損変異は見出されなかった。また、イネプロトプラストを用いた一過的発現系の実験から野生イネにおけるHd1はほぼすべて機能的であることが示された。このことから、Hd1における機能欠損変異は祖先野生種から遺伝したものではなく栽培化過程で生じた事が示唆された。また、栽培イネで見出された機能欠損変異が短期間で非常に高頻度に生じていることからHd1の機能低下アリルが積極的な選抜の標的になっていたと考えられる。さらに、このHd1の機能低下アリルの選抜は本来熱帯性の地域で生育していた祖先野生種が、花成誘導の応答を変化させることで高緯度地域での栽培を可能にするために非常に重要であったと考えられる。
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Research Products
(5 results)