2008 Fiscal Year Annual Research Report
拘束ストレスによるラット心筋コネクシン43(Connexin43)の動態
Project/Area Number |
08J08791
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鵜沼 香奈 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2) (30586425)
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Keywords | sudden death / stress / connexin43 / gap junctions / arrhythmia |
Research Abstract |
精神病院・拘置所内で異常に興奮する者をやむを得ず身体拘束した際に、突然死が起こる事例を経験する事は少なくない。臨床的にも心疾患を基盤に心理的ストレスなどの外因が突然死の誘因となることはよく知られており、内因と外因の鑑別が重要となってくる。これらは心理的ストレスによる交感神経活性化が寄与した心臓性突然死である可能性が指摘されているが詳細は分かっていない。 心筋connexin43(Cx43)は、心筋gap junction(GJ)を構成する主要なタンパクであるが、心不全、心肥大、虚血などでCx43がdown-regulation、脱リン酸化される事などが報告されている。これらの変化はGJを通じた情報伝達を阻害する事から、心疾患を基盤とした心理ストレス負荷時の突然死にはCx43の発現変化によるGJ機能低下が関与している可能性がある。 このような背景から、我々はラットを身体拘束し心臓性突然死を再現できるか否か実験を行った。その結果、身体拘束単独では突然死を再現できなかったが、阻害剤を投与しGJの機能を抑えたラットを身体拘束すると約1/5で突然死を再現した。これらの機序を解明するために、心電図、心エコー、GJタンパク、GJ情報伝達機能、組織検査などを施行したところ、身体拘束により一過性にCx43発現が上昇すること、GJ阻害剤を投与し身体拘束した群のみで突然死を再現できる事、突然死した個体では、QRS群延長・心室性期外収縮の発生頻度増加を示すほど致死性不整脈の発生リスクが上昇し心機能が低下する事を明らかにした。また、これらの頻度はGJでの細胞間情報伝達の阻害効果が高い個体ほど高かった。 これらの知見より、心理的ストレスが誘発する不整脈死を、Cx43発現上昇とGJ機能亢進によって抑制している可能性が示唆された(投稿準備中)。これは、心疾患を基盤としたストレス負荷時の突然死における動物モデルとしてその病態解明に寄与するという重要な意味を持つ。今後は、Cx43ノックアウトマウスなどを用いたさらなる追加実験につき検討中である。
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Research Products
(3 results)