2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J09173
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 崇史 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 造血幹細胞 / 骨髄増殖性疾患 / 骨髄線維症 / STAT5a / Abi-1 |
Research Abstract |
本研究ではAbi-1というシグナル伝達分子の働きに着目し、Abi-1を介したシグナル伝達機構を解明することにより、造血幹細胞の自己複製制御機構の解明に挑んでいる。その詳細は、Abi-1相互作用因子のスクリーニング系として、共通の細胞増殖機構を有していると思われるEs細胞を用いたプロテオミクス解析を試みている。本年度は、Abi-1分子を過剰発現させるレトロウイルスには成功したものの、充分なAbi-1分子を過剰発現するES細胞株の樹立はできなかった。また、マウス造血幹細胞を用いたyeast two-hybrid systemによるスクリーニング系については現在継続中である。元来、Abi-1はその名称が示す通り、慢性骨髄性白血病(CML)原因遺伝子であるBCR-Ablの結合因子として同定されたアダプター分子である。近年の報告から、Abi-1の下流因子としてSTAT5aが機能している可能性が示唆された経緯から、我々は造血幹細胞におけるSTAT5a分子機構に着目し研究を継続した。 高度に純化した造血幹細胞に活性型STAT5を遺伝子導入することで、in vitroにおける自己複製能の亢進を確認すると共に、活性型STAT5を有する造血幹細胞を移植したマウスにおいて、高頻度で致死性のMPDを発症することが明らかになった。一方、活性型STAT5を遺伝子導入した多能性前駆細胞からはMPDを発症しないことも明らかになった。更に、本MPDマウスは、一時的な末梢白血球数の増加を示すマウスが一部存在するものの、赤血球、血小板の増加という真性多血症、本態性血小板増多症様の病態を示すことはなく、移植後4〜8週という短期間で脾腫(髄外造血)を伴う重度の骨髄線維症様病態を呈することが明らかになった。本MPDマウスの病態はヒトPMF症例に酷似していることからもPMFモデルとしての有用性が伺えると共に、PMF発症におけるSTAT5aの役割を明確に示すことに成功した世界的にも新しい報告である。今後、造血幹細胞におけるSTAT5a分子機能と共に、上流因子であるAbi-1の分子機能を解明する予定である。
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Research Products
(4 results)