2010 Fiscal Year Annual Research Report
新規ABCトランスポーターABCG4の生理的機能の解明:神経変性疾患との関連
Project/Area Number |
08J09634
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小柴 梢子 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | テトラヒドロビオプテリン / 孤発性パーキンソン病 / 家族性パーキンソン病 / PARK8 / ドーパミン / セロトニン / 高速液体クロマトグラフィー |
Research Abstract |
新規ABCトランスポーターABCG4は、コレステロール等の脂質の輸送に関与すると考えられており、申請者の過去の研究から、マウスAbcg4タンパク質が脳に発現していることが明らかとなった。本研究では、ABCG4が脳内の脂質の恒常性の維持を担い、神経変性疾患の発症予防に寄与するという仮説を立て、ABCG4の生理的・病理的機能を解明することを目的とする。研究進展状況の変化及び受入研究者の変更に伴い、研究計画を変更し、本年度は「ビオプテリン(BP)代謝と神経変性疾患との関係に関する生化学的解析」を行った。 テトラヒドロビオプテリン(BH4)はGTPから生合成され、神経伝達物質(ドーパミンやセロトニン)の生合成律速酵素の補酵素である。家族性パーキンソン病(PD)の中で最も頻度が高く、孤発性PD(sPD)と臨床症状が類似するPARK8について、その病因をBP代謝の観点から検討した。PARK8患者(7名)、PARK8無症候性キャリア(2名)、sPD患者(21名)を被験者とし、脳脊髄液中のBPおよびモノアミン神経伝達物質の代謝を、高速液体クロマトグラフィーを用いて調べた。sPD患者のBP量は、正常値の約70%にまで低下が見られた一方、PARK8患者のBP量が正常範囲にあり、症状の重症度が同程度のsPD患者と比べ有意に高かった。また、PARK8患者のセロトニンの代謝物量がsPD患者に比べ有意に多いことがわかった。以上の結果から、sPD患者では発症時に脳全般的な変性が進行していること、重症度が同程度のsPD患者と比べPARK8患者のドーパミンニューロンやセロトニンニューロンの変性が軽度であることが示唆された。PARK8患者において、発症や重症度に関わる原因が神経変性以外にあることが示唆され、ドーパミンニューロンのドーパミン伝達機能の異常が要因として考えられた。
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