2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J11323
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
市川 淳也 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 海馬歯状回 / 顆粒細胞 / 熱性けいれん / 側頭葉てんかん / 苔状線維終末 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、乳幼児期の海馬歯状回神経回路の形成機構を解明するために、顆粒細胞の成熟機構に着目して研究を遂行した。難治性疾患である側頭葉てんかん患者では海馬が発作起始部となる可能性が示唆されているにも関わらず、その発達機構については未解明な部分が多い。私は、顆粒細胞が移動する際に有する先導突起が、その後の主要樹状突起に成熟することを発見した。そしてその過程には抑制性神経伝達物質であるGABA、そしてKCC2共輸送体が関与することをin vitro、in vivoにおいて明らかにした。現在は論文にまとめて投稿準備段階である。 現在私は、熱性けいれんが海馬に与える影響を調べている。これは、熱性けいれんが歯状回の形成時期である乳幼児期に生じるためである。また、側頭葉てんかん患者の約60%が過去に熱性けいれんを経験していることも理由の一つである。私は、熱性けいれんが海馬歯状回の発達に障害をきたし、異常痕跡として将来にまで影響するという仮説を立てた。一部の神経細胞のみが可視化されるThy1-mGFPマウスにヘアドライヤーを用いて高熱を誘導した。具体的には体温を40-42℃に30分間維持した。高熱誘導群において、全てのマウスでけいれん発作が確認された。熱性けいれんを誘導して1週間後に灌流固定し、共焦点顕微鏡により形態を観察した。その結果、顆粒細胞の軸索終末が本来の投射領域とは異なる錐体細胞層内で観察された。現在はこのメカニズムを検証中である。本研究は、側頭葉てんかんの発症メカニズムに迫れるだけではなく、そのメカニズムに基づいた新規治療法の開発につながると考えられる。
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