2009 Fiscal Year Annual Research Report
がん細胞におけるテロメアの維持機構とテロメラーゼの新たな生理機能
Project/Area Number |
08J11574
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
平島 匡太郎 Japanese Foundation For Cancer Research, 癌化学療法センター分子生物治療研究部, 特別研究員-PD
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Keywords | テロメア / がん細胞 / マイクロアレイ / 遺伝子オントロジー |
Research Abstract |
テロメアは真核生物の染色体末端を保護し、ある一定の長さ以下になると細胞老化が誘導される。ところがほとんどのヒトがん細胞では、テロメアを伸長するテロメラーゼが活性化しており、無限の増殖を実現している。そのいっぽう、ヒトがん細胞のテロメア長は周辺正常組織の細胞よりも短いという事実がある。そこで本研究では、がん細胞が短いテロメアを保持することの合目的性を通じ、テロメア・テロメラーゼの理解をより深め、新たながん治療法へつなげることを目的としている。 仮にがん細胞がテロメアを短く保つ理由があるとすれば、人工的にテロメアを伸長させることにより、なんらかの形で変化が現れると考えられる。本年度はHBC4(乳がん)、MKN74(胃がん)、PC-3(前立腺がん)といった様々な臓器由来のがん細胞株をもとに、テロメア伸長したがん細胞株を樹立した。次にGeneChipマイクロアレイにより、テロメア長に応じた遺伝子発現パターンを解析したところ、HBC4株においてがんの悪性度および分化度に関与する遺伝子を見いだした。そこでテロメアの伸長したHBC4株ヌードマウスに皮下移植したところ、コントロール株に比べて腫瘍増殖能が大きく減弱した。さらに組織切片を解析すると、長いテロメアをもつ株では腺管形成が非常に多く見られ、高分化型すなわち正常細胞により近い性質を示すことが明らかとなった。 テロメアがよく伸長したがん細胞株は、in vivoにおいて腫瘍増殖能が減弱し、さらに細胞形態は高分化型の性質を示した。これらの表現型はより正常細胞に近い形質であり、本研究の仮説を強く支持すると考えられる。翌年度はCre-loxP系によるhTERTの酵素活性とテロメア伸長との影響を峻別し、さらにマイクロアレイにより共通して変動する遺伝子の洗い出しなど、分子レベルでの機構解明を試みる。
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