2010 Fiscal Year Annual Research Report
社会性昆虫に内在する自己組織化機構と繁殖闘争の関係
Project/Area Number |
08J40128
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
菊地 友則 国立大学法人 千葉大学, 海洋バイオシステム研究センター, 准教授
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Keywords | 自己組織化 / 社会性昆虫 / ポリシング |
Research Abstract |
これまでの研究から、1)女王シグナルをワーカーに伝達するために、女王が巣内を頻繁に歩き回ること(Kikuchi et al., 2008)、2)女王とワーカーとの接触間隔はコロニーサイズとともに長期化し、その結果大きなコロニーではワーカーの繁殖活動が促されること(Kikuchi et al., 2008)、3)コロニー内の卵巣発達ワーカー数に比例して女王のパトロール行動が増加すること(Kikuchi & Tsuji in prep)、さらにこれら3つのメカニズムが相互作用し、女王のパトロール行動とワーカーの繁殖活動の間にフィードバック機構が存在することが明らかにした。このようなフィードバック機構の存在は、アリの社会にグループサイズの変化に関わらず安定して繁殖分業を維持するメカニズムが内在することを示唆していた。一方で、このメカニズムは常に機能しているわけではなく、大きなコロニーでは女王物質の伝達効率が低下し、ワーカーの繁殖行動が活発化する性質ももつ。これに対する適応的な説明としては、Tsuji & Ohtsuki (2009)が理論的に示したように、女王にとってのワーカー産卵のコストは個体間血縁度だけでなく、コロニーサイズ(齢)にも影響を受け、大きなコロニーではワーカー産卵が必ずしもコストにならないことと関係しているのかもしれない。これまでの生物を用いた自己組織化研究は、最適性を仮定しおり、今回のように機能不全に陥る自己組織化は報告例がない。ある意味欠陥のある自己組織化が、何故進化したのは適応的な仮説、実験が今後望まれる
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