1998 Fiscal Year Annual Research Report
東アフリカにおける国家主導の社会・文化変化と地域的適応に関する動態的研究
Project/Area Number |
09041027
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
松園 万亀雄 東京都立大学, 人文学部, 教授 (00061408)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小馬 徹 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (40145347)
中林 伸浩 金沢大学, 文学部, 教授 (30019848)
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Keywords | ケニア / 社会・文化変化 / 国民意識 / 自助組織 / キリスト教 / アフリカ独立教会 / 家族計画 / ジェンダー |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、ケニアにおける国家レベルの諸政策が、個々の国内諸民族にどのような葛藤と地域的適応を生じせしめているかについて調査研究を行った。本年度は、グシイ族、ルイヤ族、キプシギス族、ルオ族の諸社会を対象にした。本年度の調査研究の結果、つぎのような成果を得た。 1. ケニアにおけるキリスト教の導入は、土着社会の伝統との関係では現在でもなお複雑で屈折した過程をたどっている。特徴的な点は、キリスト教会が伝統的慣習を変更させているという一方向的な変化だけでなく、キリスト教自体が土着化されていくという逆の変化もみられることであり、また同一宗派であっても教会運営や宗教儀礼の解釈は一律ではなく、地域ごとの特性があることが分かった。 2. 研究者全員が民間金融組織としての「講」について各地域で調査したが、「講」は男女別に組織される傾向があり、女性による「講」ははるかに顕著で活発である。これは土地所有の主体こそ男性だが、実際の生産活動と家計管理はもっぱら主婦の仕事とされてきたことに深くかかわっている。 3. 伝統的な男女差別や役割区分に基づくジェンダー関係は、近代的な避妊法の普及や、あらたに興った観光客用物産などの地場産業、あるいは近年の多様な住民自助組織においても明確に現れている。固定的なジェンダー関係を解消するための法整備も不充分なままである。 4. ケニアの近年の民族紛争の大半は、先進的な農民、商業民として全国的に展開したバンツー系諸民族に対するカレンジン系遊牧(農牧)民の土地回復運動として現れているが、その背景にある「部族主義」は、しばしば与野党政治家の対立の結果として意図的に刺激されたものである。
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Research Products
(26 results)
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[Publications] MATSUZONO,Nakio: "Male Involvement in Family Planning in Gusii Society:An Anthropological Overview" African Study Monographs. 18(3,4). 177-190 (1998)
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[Publications] 小馬 徹: "アフリカの人々と名付け" 月刊アフリカ. 36(1)〜39(3). 10-11 (1997-1999)
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[Publications] 小馬 徹: "アフリカと「志のかたち」" 世界思想. 24. 31-35 (1997)
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[Publications] 小馬 徹: "命名と禁忌" 月刊 言語. 26-4. 36-41 (1997)
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[Publications] 小馬 徹: "「オムスビの力」と象徴ーー象徴的日本論のために" 神奈川大学人文学研究所報. 30. 35-60 (1997)
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[Publications] 小田 亮: "文化相対主義を再構成する" 民族学研究. 62-2. 184-204 (1997)
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[Publications] 小田 亮: "ポストモダン人類学の代価ーープリコルールの戦術と生活の場の人類学" 国立民族学博物館研究報告. 21-4. 807-875 (1997)
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[Publications] 小田 亮: "ネイションの人種化とセクシュアリティ" 記号学研究(ナショナリズム/グローバリゼーション). 19(印刷中). (1999)
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[Publications] 小田 亮: "文化の本質主義と構築主義を越えて" 常民文化紀要. 20(印刷中). (1999)
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[Publications] 栗本英世、松園万亀雄、他: "植民地経験の位相(印刷中)" 人文書院, (1999)
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[Publications] 松園万亀雄、川田順造、他: "アフリカ入門(印刷中)" 新書館, (1999)
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[Publications] 中林伸浩他(編): "紛争と運動" 岩波書店, 339 (1997)
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[Publications] 中林伸浩、松本宣郎、他: "信仰の地域史" 山川出版社, 396 (1998)
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[Publications] 青木保、中林伸浩、他: "情報化とアジア・イメージ" 東大出版会, 280 (1999)
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[Publications] 上野和男、中林伸浩、他: "名前の家族史(出版予定)" 早稲田大学出版部, (1999)
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[Publications] 川田順造、小馬 徹、他: "今なぜ「開発と文化」なのか" 岩波書店, 264 (1997)
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[Publications] 石井薄、小馬 徹、他: "アジア読本 ネパール" 河出書房新社, 334 (1997)
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[Publications] 小馬 徹、他: "国家とエスニシティ" 勁草書房, 334 (1997)
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[Publications] 青木保、小馬 徹、他: "紛争と運動" 岩波書店, 339 (1997)
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[Publications] 小馬徹・丸山茂・橘川俊忠(編): "家族のオートノミー" 早稲田大学出版部, 271 (1998)
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[Publications] KURIMOTO,E.,KOMMA,T.: "Conflict,Age and Power in North East Africa" James Currey(London), 270 (1998)
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[Publications] 小馬 徹、他: "笑いのコスモロジー(印刷中)" 神奈川大学人文学研究所, (1999)
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[Publications] 小田 亮、他: "理性と暴力-現象学と人間科学" 世界書院, 235 (1997)
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[Publications] 川田順造、小田亮、他: "反開発の思想(講座 開発と文化、3)" 岩波書店, 285 (1997)
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[Publications] 田中雅一、小田亮、他: "暴力の文化人類学" 京都大学学術出版会, 542 (1998)
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[Publications] 大胡欽一、小田亮、他: "社会と象徴" 岩田書院, 572 (1998)