1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09041028
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
斎藤 晨二 名古屋市立大学, 人文社会学部, 教授 (70094373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 透 北海道大学, 文学部, 助手 (50202891)
佐々木 史郎 国立民族学博物館, 助教授 (70178648)
井上 絋一 北海道大学, スラブ研究センター, 教授 (10091414)
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Keywords | 西シベリア / ネネツ人 / 民族研究 / 東シベリア / サハ(ヤクート)人 / 馬乳酒 / 狩猟・氷下漁法 |
Research Abstract |
1. 西シベリアのサレハルドにおいて管区行政府ならびに民族学研究所から最近の経済指標等の諸資料を収集し、各担当者、研究者から少数民族の置かれている現状につき、聞き取りを行った。ネネツ人等この地域の先住民族の置かれて状況はヨーロッパ・ロシアに近い地理的位置にありながら、ソ連崩壊後の社会・経済状況の中で、いかにして自活の道を見い出すか依然厳しいものがあるが、他方、彼等自身による自立的な民族学的研究が進みはじめていることも判明した。 2. 東シベリアのサハ(ヤクート)人のクミス(馬乳酒)に関し文化的、微生物学的見地から南のモンゴル人のそれとの比較研究を現地調査によって模索した。その結果、クミスは栄養源あるいは病気治療の上ではサハにおいてはすでにその意義をほとんど失ない、儀礼的ないし民族文化の象徴的存在となっていることが分かった。しかし、その醸造現場でのサンプル採集から多彩な発酵菌類を同定でき、モンゴルなどの例との比較を通じて両者の歴史・民族的関連を解明できる可能性を得た。 3. 東シベリアのバタガイ・アリタを中心とする地域における狩猟業の実態調査から、ソ連期の毛皮獣狩猟が市場価値の下落と流通の途絶により、食料自給用の大型獣猟に戻っていること、狩猟方法にマタギと同様の巻狩があることなどが分かり、また、冬期の氷下漁法の具体的な記録ができた。 4. 西ヨーロッパ、ロシアにおけるシベリア民族研究と我々の研究との資料、情報交換を行い、今後の協力の進め方を討議した。なお、当初計画したチュコト半島におけるトナカイ飼育調査は交通途絶のため断念せざるを得なかった。
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[Publications] 斎藤晨二: "シベリア研究の展開と課題" 民族学研究. 63巻1号. 67-72 (1998)
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[Publications] 斎藤晨二: "先住民にいまも生き続ける自然との「対話」" サイアス. 3巻7号. 34-35 (1998)
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[Publications] 井上絋一: "共存のモデルを求めて[Quest for Models of Coexistence]" 民族の共存を求めて(3)(「スラブ・ユーラシアの変動」領域研究報告輯. No.52. 3-15 (1998)
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[Publications] 佐々木 史郎: "ポスト・ソ連時代におけるシベリア先住民の狩猟" 民族学研究. 63巻1号. 3-18 (1998)
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[Publications] 吉田 睦: "西シベリア・ギダン・ネネツの食文化-現代極北トナカイ飼養民の食の文化的・社会的解釈-" 民族学研究. 63巻1号. 44-66 (1998)
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[Publications] 高倉 浩樹: "脱社会主義下のトナカイ飼育業の再編-東シベリア・北部ヤクーチアの一地域社会の変容過程-" 民族学研究. 63巻1号. 19-43 (1998)
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[Publications] koichi Inoue & Tomohiko Uyama(eds.): "Quest for Models of Coexistence:National and Ethnic Dimensions of Changes in the Slavic Eurasian World" Slavic Research Center of Hokkaido University, 403 (1998)