1997 Fiscal Year Annual Research Report
変容するアフリカ牧畜社会の問題解決に見る内在的論理の人類学的研究
Project/Area Number |
09041064
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Research Category |
Grant-in-Aid for international Scientific Research
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Section | Field Research |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太田 至 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助教授 (60191938)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曽我 亨 弘前大学, 人文学部, 助手 (00263062)
河合 香吏 静岡大学, 人文学部, 助教授 (50293585)
作道 信介 弘前大学, 人文学部, 助教授 (50187077)
北村 光二 弘前大学, 人文学部, 教授 (20161490)
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Keywords | アフリカ / 牧畜社会 / 社会変容 / 近代化 / 内在的論理 / 問題解決 / 市場経済 / 民族間関係 |
Research Abstract |
1.トゥルカナの病気の事例を60例収集し、診断と治療の過程を調査した結果、最近になってさかんに行われるようになった治療方法が多く、病気への関心が近年になって高まってきたことが明らかになった。 2.ガブラの家畜所有と利用に関する調査によって、ラクダを信託するという制度が社会的なネットワークを形成するとともに、父系クランの輪郭を明瞭にするために重要な役割を果たしており、また、個人を自発的に規律に服従させる装置としても機能していることが解明された。 3.ヒンバとヘレロの民族間関係については、1980年代初頭の大旱魃によって家畜群の大半を失ったヒンバが、その再建のために同じ言語を話すヘレロの居住地域に牛を買いに行った際に、親族のイデオムが活性化され歴史意識が高揚したことが明らかになった。 4.ヒンバの牛群の由来と所有・利用の調査からは、約30%のウシが売却されるなど、彼らの社会に市場経済が浸透していることが明らかになった。一方では、ウシは貸与、贈与、儀礼、賠償の支払いなど、社会的な交換にも利用されていることがわかった。 5.チャムスにおける病気への対処に関する調査をおこなった結果、隣接する民族出身の呪医が増加したり、キリスト教会が運営する診療所の利用が普及するなどの状況が観察されたが、人々は、伝統的な民族医学的知識にもとづく身体についての認知や解釈を根本的に変えることなく、選択的に新しい方法を利用していることが明らかになった。 6.トゥルカナ社会で儀礼や賠償の際に家畜が屠殺・共食される事例を収集し分析した結果、「消費」という領域における自他の経験の一致による「共同性」の表出・確認は、集権的な権力機構をもたない牧畜社会の「共同性」にとって、決定的に重要なものであることが明らかになった。
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Research Products
(11 results)
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[Publications] 太田 至: "アフリカの牧畜社会における開発援助と社会変容" アフリカ農業の問題点. 287-318 (1998)
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[Publications] 曽我 亨: "ラクダの信託が生む絆-北ケニア牧畜民ガブラにおけるラクダの信託制度" アフリカ研究. (印刷中).
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[Publications] 曽我 亨: "The camel exchange system among the Gabra:Patterns and consequences of inheritance" Ethiopia in Broader Perspective. vol.2. 597-615 (1997)
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[Publications] 作道, 信介: "Coping with the illness among the Turkana:A preliminary report" African Study Monographs. 18(印刷中).
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[Publications] 北村 光二: "Communication for "negotiation"among the Turkana" African Study Monographs. 18(印刷中).
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[Publications] 河合 香吏: "Ethno-merical science on the domestic treatments among the agropasotoral Chamus of Kenya" Proceeding of the 6th International Symposium on Traditional Medicine in Toyama. 81-94 (1997)
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[Publications] 太田 至: "Reconstruction of Cattle Herds after the Drought of Early 1980s among the Kaokolanders in Northwesterm Namibia" Paper presented at the simposium on "People,Cattle and and Land"held at Siegburg,Germany on Sept.14-17 (1997)
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[Publications] 河合 香吏: "世界の伝統医学-ケニア(1):症状を解剖学的に特定するチャムスの人びと" 医道の日本. 56(5). 9-13 (1997)
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[Publications] 河合 香吏: "世界の伝統医学-ケニア(2):治療の原理:視覚化される治癒の過程" 医道の日本. 56(6). 7-12 (1997)
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[Publications] 河合 香吏: "世界の伝統医学-ケニア(3):チャムスの病因論" 医道の日本. 56(7). 9-13 (1997)
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[Publications] 太田 至: "カオコランドから見た「部族主義」と「人種差別」" 月刊アフリカ. 37(10). 18-23 (1997)