1998 Fiscal Year Annual Research Report
変容するアフリカの牧畜社会の問題に見る内在的論理の人類学的研究
Project/Area Number |
09041064
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太田 至 京都大学, 大学院アジア・アフリカ地域研究研究科, 助教授 (60191938)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河合 香吏 静岡大学, 人文学部, 助教授 (50293585)
作道 信介 弘前大学, 人文学部, 助教授 (50187077)
北村 光二 弘前大学, 人文学部, 教授 (20161490)
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Keywords | アフリカ / 牧畜社会 / 社会変容 / 近代化 / 内在的論理 / 問題解決 / 市場経済 / 民族間関係 |
Research Abstract |
1. ナミビアに住むヒンバとへレロの民族間関係については、国家建設をめぐる中央政治が民族意識のあり方をつよく規定してきた側面があること、歴史的な英雄の墓が再建されるなど、人びとが政治的な意図をもって象徴的な義置を操作しつつ、民族憲識を高揚させてきた側面があることがあきらかになった。 2. カラモジャ地域を中心にウガンダ北東部の広域調査をおこなった結果、人びとはウシを中心にした牧畜を営むと同時に、よい降雨にめぐまれれば広範な農耕に従事し、モロコシ、トウモロコシ、シコクビエ、換金作物のヒマワリなどを栽培していることが明らかになった。 3. カラモジャ地域にすむ牧畜民・ドドスの予備的調査として、土地・資源の所有と利用の実態を大まかに把握するため、放牧地や給水地、家畜キャンプの移動経路等、および畑の位置や利用のサイクル等に関する資料・情報を収集した。また、地域集団による土地所有のありかたについて、「聖地」にまつわる言説や集団の移動や融合の歴史等に関する予備的資料を収集した。 4. トゥルカナの治療儀礼に使われる家畜の所有者を調べた結果、治療にもちいる家畜は、病人の親族のなかから広範に調達されており、伝統的な社会関係が援用されていることが明らかになった。 5. トゥルカナにおける占い師による占いの場面を調査した結果、妖術の実態が解明された。妖術の原因としては、物の授受や男女関係における「拒み」が主因となって、心身の不調を引き起こされている。それにたいしてトゥルカナは儀礼を実施したり、仲直りのための話し合いをもつことによって対処しており、妖術が心身の不調の原因であると推定されるときにも、それに妖術で対抗するような手段はけっしてとらない。治療の効果をあげるためには、彼らは儀礼の意味を問うのではなく、形式を踏襲することに重きをおいていることが明らかになった。
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