1999 Fiscal Year Annual Research Report
新世界ザル・クモザル社会の離合集散性とその適応的意味に関する研究
Project/Area Number |
09041144
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Research Institution | MIYAGI UNIVERSITY OF EDUCATION |
Principal Investigator |
伊沢 紘生 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (70072676)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 幹夫 宇都宮大学, 農学部, 教授 (80111392)
木村 光伸 名古屋学院大学, 経済学部, 教授 (50167376)
西邨 顕達 同志社大学, 理工学研究所, 教授 (00027492)
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Keywords | 離合集散型社会 / クモザル / チンパンジー / 食物リスト / パーティ / 群間関係 / 種子散布 / 群落構成 |
Research Abstract |
離合集散型で父系という、他のサル類ではアフリカの類人猿チンパンジーとボノボでしか見られないユニークな社会構造をもつクモザルについて、三年計画の調査最終年の本年度は、ハビチュエーションと個体識別が済んでいる隣接四群を対象に、前年度に引き続き、複数の研究者による同時観察を実施した。その結果、1.クモザルの食物リストを完成させた。2.季節ごとの果実生産量の多少と離合集散するパーティのあり方(パーティ・サイズや個体関係等)との関係が明らかになった。3.離合集散に介在するロング・コールの意味が解明された。4.個々のメスが群れの行動圏の中で特異的に執着する狭い地域のあることが分かった。5.オスは行動圏の全体をほぼくまなく利用し、境界域ではパトロール行動を頻繁に行うことが明らかになった。6.その際オスは集まりあうこと(連合)の実態が調べられた。7.群間に抗争的な関係があること、とくにオス同士のその関係は非常に強いことが分かった。その一方、三年間の個体識別しての継続調査で、1.アカンボウの成長や発達の過程、2.群れごとの個体の移出入、3.出産や交尾の季節性、4.サラオ(塩場)利用頻度の季節性やその意味が解明された。 クモザルの種子散布に関しては、調査地の熱帯雨林を構成する樹種としてきわめて重要なヤシ科Oenocarpusbatauaとクワ科Ficus sp.で、クモザルが中心的役割を果たしている詳細が明らかになった。これら二種の果実はクモザルの主要な食物であるので、フェロジー観察を三年間継続させ、その結果、どの群れについても、一年中両種のいずれかの木が結実している事実を突きとめた。森林の群落構成については、新しく形成された砂州における森林生成メカニズムや、優先樹種のパッチ構造の年変動、実験方区での森林の生産量が調べられ、それらとクモザルの行動圏、パーティの移動ルートや泊まり場との関係が明らかになった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 伊沢 紘生: "続・クモザルも群れる-離合集散社会の外側-"モンキー. 42-5.6. 3-14 (1999)
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[Publications] 伊沢 紘生: "アマゾンにチンパンジー社会の起源を求めて"遺伝. 53-3. 64-67 (1999)
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[Publications] Kosei Izawa: "A list of Animals which fed on fluit of a Fig tree"Field Studies of Fauna and Flora,LaMacarena,Colombia. 13. 25-30 (1999)
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[Publications] 西邨 顕達: "野生ウーリーモンキー雌の交尾・生殖パターン"同志社大学理工学研究報告. 40-2. 1-14 (1999)
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[Publications] Mikio Kobayashi,Yukiko Shimooka,Kosei Izawa: "Frugivore-dispersed eedlings of Milpeso palm,Oenocarpus bataua in the neotropical rain forest of La Macarena,Colombia"Field Studies of Fauna and Flora,LaMacarena,Colombia. 13. 41-46 (1999)
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[Publications] 土谷 彰男、伊沢 紘生: "コロンビア国マロレナ地域の河畔林の樹種特性"広島大学総合学部紀要IV、理系編. 25. 117-124 (1999)