1998 Fiscal Year Annual Research Report
カナリア諸島の遺存型照葉樹林の植生パターンと気候・地形要因の比較生態学的研究
Project/Area Number |
09041146
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大沢 雅彦 千葉大学, 理学部, 教授 (80092477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DEL Arco Mar ラ, ラグナ大学, 教授
WILDPREL Wol ラ, ラグナ大学, 教授
高田 将志 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (60273827)
江口 卓 高知大学, 文学部, 教授 (30263966)
中村 幸人 作新学院大学, 経営学部, 教授 (50198248)
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Keywords | 常緑広葉樹林 / 雲霧林 / 地形傾度 / 樹型 / 芽 / シュートモジュール / 土壌要因 / 葉の特性 |
Research Abstract |
カナリア諸島テネリフェ島アナガ山地の雲霧林の気候条件、第4紀地質・地形、森林の林冠構造と林床植生、さらに構成樹木の樹型、フェノロジー、芽、葉の特性などについて調査した。アナガ山地雲霧林は年間平均すると湿度90%ほどであるが、風向と逆転層の高さによって乾湿条件が極端に変化した。アナガ山地の火山活動と地殻変動、さらにその後の侵食作用などについて調査し、テネリフエ島における地形形成の比較の視点を提示した。アナガ山地雲霧林の範囲は標高500-1500m付近までで標高差1000mほどである。日本の常緑広葉樹林とよく似た組成、構造を持つが、組成は種数だけでも約1/3しかなくはるかに単純である。構成樹木は全部で15種であったが、その休眠芽は保護器官の構造が比較的単純なヒプソフィル芽のものが全体の82.3%と多く、葉は亜中形葉が多く、より熱帯的な様相を呈していた。温帯的なスケール芽はわずか1種しかなかった。アナガ山地雲霧林の構造を調べるために標高約1000mの尾根から谷底まで標高差150mにわたるトランセクトを設置して地形傾度にそった森林の変化を調べた。この傾度にそってもっとも大きく変化したのは樹高と胸高直径であった。尾根付近では強風と地形のためにとくに湿潤な冬でも乾燥しがちでその両方の条件のためもあって樹高が低いと考えられた。谷は乾季にはかなり乾燥がきつくなるにしても冬は水分が豊富であり、樹高成長には問題がない。ところが谷では崩壊が起こりやすく、むしろ物理的撹乱によって樹木の寿命が短く、したがって胸高直径は斜面部ほど大きなものは見られなかった。このように尾根-谷傾度に沿っては日本と同様の構造が見られた。カナリア諸島の雲霧林構成種は第3紀の遺存種と考えられているが、日本の森林の骨格的な種がひとつずつ残っているような形になっており、群集構造の成立を考える上で興味深い結果が得られた。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Ohsawa,M.& Nitta,I.: "Patterning of subtropical/warm-temperate evergreen broad-leaved forests in east Asian mountains with special reference to shoot phenology" Tropics. 6. 317-334 (1997)
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[Publications] Nitta,I.& Ohsawa,M.: "But structure and shoot architecture of canopy and understorey evergreen broad-leaved trees at their northern limit in East Asia." Ann.Bot.81. 115-129 (1998)
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[Publications] Bhuju,D.R.& Ohsawa,M.: "Effects of nature trails on ground vegetation and understory colonization of a patchy remnant forest in an urban domain." Biol.Conserv.85. 123-135 (1998)
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[Publications] Kitayama,K.,Aiba,S.-I.,Majalap-Lee,N.,Ohsawa,M.: "Soil nitrogen mineralization rates of raintorests in a matrix of elevations and geological substrates on Mount Kinabalu,Borneo." Ecol.Res.13. 301-312 (1998)
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[Publications] Yoshida,N.& Ohsawa,M.: "Seedling success of Tsuga sieboldii along a microtopographic gradient in a mixed cool-temperate forest in Japan." Plant Ecol.140. 89-98 (1999)
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[Publications] Bhuju,D.R.& Ohsawa,M.: "Species dynamics and colonization patterns in an abandoned forest in an urban landscape" Ecol.Res.in press.
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[Publications] Gutierrez,E.& Ohsawa,M.: "Selves Temperades.Biosfera Vol.6." Enciclopedia Catalana.Barcelona., 398 (1997)
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[Publications] Ohsawa,M.et al.: "Impacts on natural ecosystems.In: Global Warming:The Potential Impact on Japan." Springer.Tokyo., 244 (1998)