1997 Fiscal Year Annual Research Report
ボノボ(Pan paniscus)の分布と生態的特性
Project/Area Number |
09041160
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Research Category |
Grant-in-Aid for international Scientific Research
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Section | Field Research |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加納 隆至 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (40045050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 秀司 京都大学, 霊長類研究所, 教務職員 (80293976)
古市 剛史 明治学院大学, 教養部, 助教授 (20212194)
金森 正臣 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (70015585)
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Keywords | チンパンジー / ボノボ / 分布域 / 生息環境 / 種内変異 / 生息地利用 / 集団構成 / 乾燥疎開林 |
Research Abstract |
平成9年度は、東アフリカにおけるチンパンジー分布の限界域に位置する下記の3地域で調査・研究を実施した。 1.タンザニア西部のウガラ丘陵:この地域は、チンパンジー分布域の東限かつ最も乾燥した地域の一つであり、初期人類の生息地に近い環境であると考えられている。金森・小川は1994年からチンパンジーの密度・遊動と生息地利用の研究を進展させた以下の結果を得た。(1)同地域のチンパンジーは、泊り場として利用する常緑樹林の存在と、採食可能な果実量によって生息が制限されており、(2)そのためにウガラ丘陵内でも、植生環境によって生息密度の高低が存在し、季節的にも変化した。(3)また、高い捕食圧に対抗すると共に分散した乏しい果実を採食するために、集団サイズを変化させていた。 2.タンザニア西南部のルワジ地域:この地域では、最も南に生息する野生チンパンジーの孤立個体群が金森・小川によって1996年に発見された。加納・金森・小川は、同地域に、わずかな個体数のチンパンジーが非常な低密度で生存し続けている事を確認し、早急な保護が必要である事を明らかにした。 3.ウガンダ南部のカリンズ地域:この地域は、チンパンジーの東限の一部をなし、森林・ウッドランド・サバンナの複雑なモザイクからなる地域である。古市・橋本・田代は、同地域のチンパンジーの人付けに成功し、詳細な観察が可能となった。遊動と集団編成の季節変化と食物生産の空間・時間的変動の資料を収集し、その関連を解析中である。 これらの調査によって、(1)チンパンジーが多様な環境に分布し、(2)それぞれの環境に応じた生息地の利用と(3)集団構成・サイズの変化によって、各地での生息を可能にしていることが明らかとなった。パン属のもう一方の種であるボノボと比較する貴重な資料が得られたと考えられる。
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[Publications] Ogawa, H., Kanamori, M, & Mukeni, S.H.: "The Discovery of chimpanzees in the Lwazi River Area, Tanzania:a new southern distribution Limit." Pan Africa news. 4(1). 1-3 (1997)
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[Publications] Hashimoto, C.: "Context and development of sexual behavior of wild bonobos(Pan paniscus)at Wamba,Zaire." International Journal of Primatology. 18. 1-21 (1997)