1998 Fiscal Year Annual Research Report
グローバリゼーションの時代における「多文化主義」の比較研究
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09044024
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
伊豫谷 登士翁 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (70126267)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
サカイ ナオキ コーネル大学, アジア学部, 教授
モリスースズキ テッサ オーストラリア国立大学, アジア太平洋研究所, 教授
山之内 靖 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 教授 (60014429)
坂元 ひろ子 一橋大学, 社会学部, 教授 (30205778)
成田 龍一 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (60189214)
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Keywords | グローバリゼーション / 多文化主義 / 国民国家 / 移民 / ナショナリズム / ポスト・コロニアル / レイシズム / アボリジニー |
Research Abstract |
本年度の課題は、地域からのグローバリゼーションであり、7月に「変動するアジアとサバルタン研究」をテーマとして、ワークシップを開催した。チャクラバルティの基調報告は、「ヨーロッパの地域化?」と題し、サバルタン研究が生成されてきた背景、インド史研究からポスト・コロニアル研究への転換、世界各地におけるサバルタン研究の現状などが取り上げられた。同報告に対し、オーストラリアからベイルハーツが、日本から臼田雅之がコメントを行い、グローバリゼーションという現状のなかでのサバルタン研究の意義、近年のカルチュラル・スタディーズへの影響、あるいはサバルタン研究のなかのジェンダーといった点が指摘された。とくに、日本における民族史や民衆思想研究とサバルタン研究との方法的な共通性に議論が集中し、両研究が抱える現代の問題が明確となった。 また、オーストラリアのバースならびにキャンベラで行った研究会では、日本における差別研究、社会科学のあり方をめぐる論争を報告し、現地の研究者との交流を図った。多文化主義や移民政策、先住民政策における両国の差違が、近代国家形成の根幹に関わる問題であり、先進/後進という二分法的発想による従来の議論が批判された。沖縄で開催した研究会は、上記の研究会を踏まえ、グローバリゼーションに対抗しうる場が地域のなかにどのように形成されるのか、が問われた。越境空間としての沖縄の歴史と雑種性を再考するなかで、<西洋対アジア>、<中心対周辺>という発想を根底から問題視し、被害者と加害者という立場を越えた研究の在り方を模索する必要性が認識された。また、残された問題として、日本とアジアとの関わりをグローバリゼーションのなかでどのように位置づけるのか、という点であり、今後の課題とされた。
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[Publications] 伊豫谷登士翁: "グローバリゼーションと現代移民研究の課題" 一橋論叢. 120・4. 20-35 (1998)
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[Publications] 坂元 ひろ子: "恋愛神聖と民族改良の「科学」" 思想. 894. 4-34 (1998)
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[Publications] 広田 昌希: "日本における差別研究の諸問題" 現代思想. 27-2. (1999)
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[Publications] 安丸 良夫: "「従軍慰安婦」問題と歴史家の仕事" 世界. 5月号. 75-88 (1998)
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[Publications] 山之内 靖: "ポスト現代と資本主義" 神奈川大学評論. 30. 25-35 (1998)
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[Publications] 長原 豊: "<セー法則>を維持する時間-空間装置" 現代思想. 26-3. 270-296 (1998)
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[Publications] 伊豫谷 登士翁: "経済のグローバリゼーションと「開発」" 開発と文化. 7. 61-79 (1998)
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[Publications] D・チャクラバルティ: "マイノリティの歴史、サバルタンの過去" 思想. 891. 31-48 (1998)
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[Publications] T・モーリス=鈴木: "グローバルな記憶・ナショナルな記述" 思想. 890. 35-56 (1998)
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[Publications] 伊豫谷・酒井・スズキ編: "グローバリゼーションのなかのアジア" 未来社, 242 (1998)
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[Publications] 成田 龍一: "「故郷」という物語" 吉川弘文館, (1998)
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[Publications] 川村 湊: "文学からみる「満洲」" 吉川弘文館, 190 (1998)
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[Publications] 広田 昌希: "差別の視線" 吉川弘文館, 237 (1998)