Research Abstract |
今年度は,リボソーム蛋白質S7を対象に,そのSe-Met置換体を作製し,ESRFの放射光施設を利用して回析データを収集し,構造解析を試みた.mRNAに転写された遺伝情報はリボソーム上で翻訳され,相当する配列を持った蛋白質が作り上げられる.この翻訳過程の中心機能の一つである解読(decoding)は,30Sサブユニットの中のHeadとProtrusionで挟まれた領域で行なわれていることが明らかになっている.リボソーム蛋白質S7は,30SサブユニットのHead部分に存在し,decoding領域を形成する役割を担った残基数155の蛋白質であり,16S RNAのdecoding領域,mRNA,A,PサイトのtRNAなどに隣接している.その立体構造解析は,50数個あるリボソーム蛋白質の中でも極めて重要な意味を持っている.私達がこれまでMAD法を適用した蛋白質と比べ,S7は,残基数155,Se原子が6個と,解析にやや困難が予想されたサンプルであったが,ESRFにおいて4波長でMAD法用の回折データを収集し,存在する6個のSeのすべての位置を決めることができた.さらに,新規に開発されたSHARP,SOLOMONを適用することで,非常にきれいな電子密度が得られ,2.5Å分解能での構造解析に成功した.蛋白質は,αらせんよりなる疎水性コアと,それから伸びたβリボン構造を持つ.立体構造とアミノ酸配列の保存性から,機能部位をβリボン構造の周辺に同定することができた.この研究結果は,9月にスウェーデンで開かれた国際会議Structural Aspects of Protein Synthesisにおいて田中が発表した.実験のために中川がESRFに出張し,また,ESRFから討論のために若槻が来日して北海道大学でセミナを行なった.また,結晶学会において,田中グループ,若槻グループが夫々の研究発表を行なった.
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