1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09044049
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
井上 久遠 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30021934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
コーテンズ エリック フランス共和国モンペリエ大学, 物性科学研究所, 教授
山中 明生 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (30182570)
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Keywords | 量子常誘電体 / SrTiO_3 / Muller相 / ハイパーラマン散乱 / 極性光学ソフトモード / ブリルアン散乱 / 超高分解X線回折 / 非弾性中性子散乱 |
Research Abstract |
代表的量子常誘電体であるSrTiO_3ではMuller相と呼ばれる異常が見出され、新しいタイプのコヒーレントは低温凝縮相出現の可能性がある。本研究の目的は、極性光学ソフトモードを総合的に研究し、Muller相異常を明らかにし、併せて低温凝縮相出現の有無・起源を解明することである。 前年度はハイパーラマン散乱(日本側担当)による極性光学ソフトモードの精密測定に成功し、極性光学フォノンにより音響フォノン異常(フランス側発見)が誘起される事を明らかにした(論文発表)。本年度は研究を発展させ、以下の成果を得た。 1. 高分解ハイパーラマン散乱を広い温度領域で実施し、極性光学ソフトモードの固有振動数が立方晶一正方晶構造相転移の影響を大きく受けている事を見出した(日本側)。その結果、強誘電性前兆現象は主に構造相転移に伴うチタン-酸素八面体の回転・巨視的歪により誘起されたものである事を明らかにした。これは従来の強誘電性前兆現象の理解を変更する必要がある事を意味する(論文投稿中)。 2. 極性光学ソフトモードの線幅にMuller相温度以下で異常が現われる事を見出した(日本側)。一方フランス側でも、ブリルアン散乱分光や放射光を用いた超高分解X回折によりMuller相異常の存在を確認した。 3. 本来ハイパーラマン不活性なSモードがハイパーラマン散乱で観測されること、極性光学ソフトモードに偏光選択則も異常をしめすことが見出された(日本側及びフランスとの共同実験)。非弾性中性子散乱においても、極性光学ソフトモードが活性な配置においてSモードが観測された(フランス側)。 4. 以上の実験結果を総合的に検討し、Muller相異常の起源に関してはほぼ明らかにすることができた。第二の目的である「新しいタイプの低温凝縮相」に関しては、現段階では断定できないが、幾つかのモデルを検討中であり、近い将来解明されるものと期待される。
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[Publications] B.Hehlen: "Brillouin-scattering observation of the TA-TO coupling in SrTiO_3" Physical Review B. 57・22. R13989-R13992 (1998)
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[Publications] 山中明生: "ペロフスカイト型強誘電体の巨大TO-LO分離" 固体物理. 33・8. 45-53 (1998)
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[Publications] B.Hehlen: "observation of the coupling between TA and TO modes in SrTiO_3 by Brillouin scattering" Physica B. (印刷中). (1999)