1999 Fiscal Year Annual Research Report
新規キラル光増感剤による立体選択的光誘起電子移動及びエネルギー移動のダイナミクス
Project/Area Number |
09044096
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
榊 茂好 熊本大学, 工学部, 教授 (20094013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武蔵 泰雄 熊本大学, 総合情報処理センター, 講師 (10271131)
濱田 泰輔 熊本大学, 工学部, 助手 (10253717)
杉本 学 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 講師 (80284735)
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Keywords | キラルルテニウム(II)錯体 / キラル銅(I)ビピリジン錯体 / キラルコバルト錯体 / 立体選択的光還元 / 静的消光反応 / ab initioMO計算 / ZINDO計算 / エネルギー移動 |
Research Abstract |
キラルルテニウム(II)錯体、Δ-[Ru(menbpy)_3]^<2+> (menbpy=4.4'-bis{(1R,2S,5R)-(-)menthoxycarbony1}-2,2'-bipyridine)の励起状態の[Co(acac)_3]による消光反応を行い、立体選択性を検討したところ、選択性はほとんど見られなかった。これは、定常光還元反応における高い立体選択性と対照的であった。一方、パルスラジオリシスによりΔ-[Ru(menbpy)_3]^<2+>の1電子還元体を生成させて[Co(acac)_3]との反応を行ったところ、立体選択性は1.27であった。これは電子移動反応が立体選択的に行われることを示している。従って、[Co(acac)_3]による消光反応に選択性が見られないのはエネルギー移動によるものであり、エネルギー移動は立体選択的に起こらない結論出来た。エネルギー移動はForster機構でなくDexter機構で進行することが理論解析から示唆された。キラル銅(I)錯体[Cu(dmdcbpy)(PPH_3)_2]+ (tmdcbpy=4,4',6,6' -tetramethy1- 5,5' -bis(S)-(-)-1-pheny1- carbamoy1)-2,2' -bipyridine)による[Co(edta)]-の光還元を行ったところ、低温では非常に立体選択性が高くなることが明らかとなった。エナンチオマー過剰率は70%に達した(転化率10%時)。消光反応から、静的消光機構で進行していることが染まされた。エンタルピー変化にはΔ-[Co(edta)]^-,Λ-[Co(edta)]^-の差がほとんど見られず、この高い選択性の出現過程は未だ明らかでないが、この選択性はこれまで最高値に近いものである。金属錯体間の電子移動に関する理論的検討の第一歩として、[(H_3N)_5Ru(NC)O_S(CN)_5]-のDFT及びab initioMO計算を行った。基底電子配置はRu(III)-Os(II)と言われているが、計算結果はこれと異なり、Ru(II)-Os(III)であった。電場をかけると、この電子配置Ru(III)-Os(II)に変化した。これらの結果は、電子移動が溶媒及び共存イオンに影響されること、電場により新しい電子配置が出現できることを示すものである。立体選択的光化学反応と直接関連は無いが、金属錯体の機能化の面から興味深く、新しい錯体化学への展開が期待できる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] K. Sakanoue,M. Motoda,M. Sugimoto,and S. Sakaki: "A Molecular orbital Study on the Hole Transport Property of Organic Amine Compounds"J. Phys. Chem. A.. 103,No.28. 5551-5556 (1999)
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[Publications] T. Hamada,B. S. Brunschwig,K. Eifuki,E. Fujita,M. Korner,S. Sakaki,R. van Eldik,J. F. Wishart: "Enantioselectivities in Electron-Transfer and Excited State Quenching Reactions of Chiral Ruthenium Complex Possessing a Helical Structure"J. Phys> Chem. A. 103,No.29. 5645-5654 (1999)
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[Publications] S. Sakaki,N. Mizoe,Y. Musashi,and M. Sugimoto: "Platinum-catelyzed hydrosilylation of ethylene. A theoretical study on the reaction mechanism involving cis-trans isomerization of PtH(SiH_3)(PH_3)_2"Coord. Chem. Rev.. 190-192. 933-960 (1999)
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[Publications] H. Ihara,T. Sagawa,K. Nakashima,Y. Goto,J. Chowdhury,S. Sakaki: "Enhancement of Diasteromer Selectivity Using Highly-Oriented Polymer Stationary Phase"Chmeistry Letters. No.1. 128-129 (2000)
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[Publications] T. Hamada,H. Ohtsuka,and S. Sakaki: "Photoinduced Deracemization of [Co(acac)_3](acac-=acetyl-acetonate) with Chiral Δ-[Ru(menbpy)_3]^<2+>"Chemistry Letters. (in press). (2000)