1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09044230
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Research Category |
Grant-in-Aid for international Scientific Research
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Section | Joint Research . |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
下東 康幸 九州大学, 理学部, 教授 (00211293)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野瀬 健 九州大学, 理学部, 助手
COSTA Tommas イタリア国立衛生研究所, 主席研究員
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Keywords | 受容体 / 鎮痛 / オピオイド受容体 / エンケファリン / 内蔵リガンド / 受容体活性化 |
Research Abstract |
近年、オピオイド受容体を初めとする7回膜貫通型受容体の構造が相次いで解明され、リガンド結合部位を特定する研究成果も報告されるようになった。しかし、リガンドの結合したのちの受容体分子の情報伝達機構の解析については有効な研究手法がなく、手着かずの状態である。本研究では、「オピオイド受容体にリガンド・エンケファリンを内蔵させる」というユニークな発想により、分子機構の解明をめざす。平成9年度における成果は、以下の2つに要約される。 1.エンケファリン内蔵の変異受容体の作製:δ型とμ型の変異受容体について、通常の受容体の細胞質外のN末端に、酵素・トロンビンの結合部位(DKYEPFW)、エンドルフィンN端8残基(YGGFM TSE)、トロンビンによる切断部位(LDPR)、そして標識のため市販のM1抗体のエピトープであるペプチド断片(DYKDDDD)を順次N端へ延長した構造をもつcDNAクローンを構築した。CHO細胞に発現して調べた結果、外部からのエンケファリン高活性誘導体により活性化を受けることがGTPaseの活性化実験から確認された。しかし、酵素・トロンビンを作用させたときのGTPaseの活性化は10%程度であり、完全な活性化には至らなかった。これは、内蔵エンケファリンの結合、あるいはトロンビンの結合に立体障害があるためと考えられた。 2.受容体のクローニング:新規δ型のクローニングの過程で、オピオイド受容体に非常によく似た、疼痛刺激を媒介するペプチド・ノシセプチンの受容体(ORL1)がクローニングされた。 なお、新たに得られた知見として以下の2つを特筆することができる。 1.エンケファリン内蔵のδ型とμ型の変異受容体を作製して、δ型、μ型に特異的なエンケファリン誘導体で受容体応答を解析した。その結果、変異のない受容体と全く同様に結合し、受容体を活性化することが判明した。これにより、受容体の細胞膜外のN末端部分に新たにペプチド断片を結合しても、受容体の機能に何らの影響を与えないこと証明された。一方、酵素・トロンビンによる活性化が完全でなかったことより、変異受容体の構築には、酵素の作用性およびリガンドの結合部位へのアクセスの立体効果に配慮しなければならないという貴重な教訓が得られた。 2.疼痛刺激を媒介するペプチド・ノシセプチンの受容体(ORL1)をヒト脳のcDNAライブラリーよりクローニングすることができた。ノシセプチンのアナログを種々化学合成して受容体結合性を検討し、この受容体がオピオイド受容体とは全く異なることが証明された。
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[Publications] Takeru Nose: "The Role of Arginine in Thrombin Receptor Tethered-Ligand Peptide in Intramolecular Receptor Binding and Self-activation" Bull.Chem.Soc.Jpn.(印刷中、現在発行予定). (1998)
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[Publications] Tsugumi Fujita: "Agonist-Antagonist Structure-Activity Relationships of Thrombin Receptor Tethered Ligand Peptide" Peptide Science 1997. (印刷中、現在発行予定). (1998)
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[Publications] Yoshiro Chuman: "A Novel Type of Rat Brain δ Opioid Receptors Differenciated by Cyclopropylphenylalanine-containing Enkephalin Analog" Peptide Science 1997. (印刷中、現在発行予定). (1998)
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[Publications] Takeru Nose: "Structural Requirements of Hyperalgesic Nociceptin in Receptor Binding and Activation" Peptide Science 1997. (印刷中、現在発行予定). (1998)
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[Publications] Yoshiro Chuman: "Discrimination of a Novel Type of Rat Brain δ Opioid Receptors by Enkephalin Analog Containing Structurally Constrained Cyclopropylphenylalanine (∇Phe)" Biochem.Mol.Biol.Int.42・6. 1227-1233 (1997)
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[Publications] Yasuyuki Shimohigashi: "Structure-Activity Relationships of A Naturally Occurring Nociceptive Peptide,Nociceptin" Peptide Chemistry 1996. 157-160 (1997)