1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09203203
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小森田 秋夫 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (30103906)
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Keywords | ポーランド / 議会 / 体制転換 / ポスト社会主義 / 民主主義 / 政治システム |
Research Abstract |
自由な選挙によって選ばれる議会を中心とした政治システム(議会制民主主義)の形成は、「民主化」という観点から見ればひとつの到達点である。しかし、議会制民主主義というシステムそれ自体は、同時に「いかなる民主主義か」という新たな問いを内包している。ポーランドをふくむ旧東欧諸国においては、1989年を境に、「いかに民主化するか」という問題から「いかなる民主主義か」という問題へと焦点が移動したのは確かであるが、後者の問題が89年以前からすでに顔をのぞかせていたことも見逃すことはできない。 本研究では、以上のような関心から、89年以降のポーランドの3つの議会、すなわち89年6月、90年10月、93年9月の選挙によって選ばれた議会の姿を、(1)社会における政治的分岐を議会構成に反映させる政党システムと選挙制度、(2)いずれも国民による民主的選挙を正統性根拠とする大統領と議会との関係、(3)議会的決定を直接民主主義と立憲主義という別個の方向から制約するレフェレンダムと違憲審査制、(4)議会外の社会的勢力としての労働組合およびカトリック教会と議会との関係という「いかなる民主主義か」にかかわる諸論点と、(5)国有企業の私有化と(6)新憲法の制定という、民主主義のメカニズムを通じて決定されるべき体制転換期の主要争点に即して描き出すことを試みた。さらに、97年9月の選挙によって議会構成が大きく変わり、民主左翼同盟とポーランド農民党による連立政府に代わって、連帯選挙行動と自由同盟による連立政府が成立した。前議会までに上記の(6)は解決され、(5)も主要な争点ではなくなりつつあるが、(1)から(5)までの問題はなお継続している。とりわけ、「連帯」労組を背景とする連帯選挙行動が与党第1党になったことによって、(4)が従来にも増して鋭い問題になる可能性がある。このような見通しをもちつつ、9月の選挙をめぐる政治状況と選挙結果の分析をおこなった。
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Research Products
(1 results)