1997 Fiscal Year Annual Research Report
日本古代の法制文献の基本的特徴を解析する方法の開発に関する研究
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09204238
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Research Institution | Miyazaki Sangyo-keiei University |
Principal Investigator |
柴田 博子 宮崎産業経営大学, 法学部, 講師 (20216013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水本 浩典 神戸学院大学, 人文学部, 教授 (30140396)
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Keywords | 令義解 / 古代日本の法制文献 |
Research Abstract |
本年度は、まず『令義解』に関する研究をもとに、その編纂の趣旨と過程、撰定者等について整理した。日本では、すでに中国において高度なレベルに達していた法律の解釈学と、古代国家が『律』『令』実際の行政に適用していく過程において各法文の運用上の解釈の策定が必要となったこととに基づいて、『律』『令』の解釈学が発達した。そして施行後100年以上を経た9世紀初期に至って、複数の解釈学説が提起されている混乱を背景に、解釈を整理・統一する必要性が唱えられた。これをうけ、右大臣清原夏野を最高責任者として国家事業で編纂されたのが『令義解』である。その撰定者には法律学者だけでなく当代随一の文章博土なども加わっていること、詔によって遵守が命じられていることなどから、義解の文章は法文解釈表現の規範として定点的指標を与えてくれるものであることを確認した。 次に『令義解』の文章を検討しやすくするため、データベースSHUUGEから『令義解』と同じ内容である『令』本文・注文、義解の文を抽出してサブファイルを作成した。そして昨年度その有効性が確かめられた漢文の俗語・口語的表現や助辞をもとにした分析を試みた。その際義解の文章の特徴を明らかにしやすいように、『令』本文・注文と、法律学者の解釈の集大成である集解諸説の文章とを対照した。具体的には「仮如」などの仮定的表現や「登即」といった俗語、そして「者何」など設問を表現す助辞や文末におく助辞である「耳」を検討した。その結果、義解の文章にいくつかの特徴的な点が存在することは窺えたが、その理由までは明らかにすることができなかった。違いをもたらす背景の慎重な検討の必要性と、各語句の深い分析の必要性を今後の課題としておきたい。
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