1997 Fiscal Year Annual Research Report
縄文人 アイヌの系統と東アジア諸集団の多様性に関する形態学的再検討
Project/Area Number |
09208203
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
埴原 恒彦 東北大学, 医学部, 助教授 (00180919)
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Keywords | 頭蓋形態 / 地理的変異 / 新人の起源 / 拡散 |
Research Abstract |
本年度の研究では、縄文人、アイヌの頭蓋の特徴を、現生人類の形態変異とその地理的分布という視点から捉えなおし、その系統関係の再考を試みた。 前頭部、鼻部、頬上顎部の顔面平坦度計側を含む34頭蓋計測値を全個体についてC-scoreに変換し、マハラノビス距離から、集団間の生物学的距離を求めると、縄文人、アイヌは東アジアの集団とは大きく離れ、特に類似する集団は認められなくなる。しかし、分析の対象とした集団の中ではオーストラリア、メラネシア集団ほどには他の集団と異なった頭蓋形態を示すともいえなさそうである。このことは縄文人、アイヌは、東アジアを源郷とする集団として捉えうることを示唆すると同時に、彼らが、今日の東アジア諸集団の中では、比較的generalizedな特徴を色濃く残している集団である可能性をも示唆する。 次に、頭蓋の解剖学的小変異15項目の出現頻度に基づき、B_2距離を計算し、アイヌと他の集団との距離を分析してみると、アイヌは全体的には東アジアの集団に近く、また、ミャンマーやセレベス-小スンダ列島といった一部の東南アジア集団には比較的類似するようである。しかし、他の東南アジア集団については現代日本人やモンゴル-北東アジア集団よりもアイヌとの類似度は低い。 いづれにしろ、アイヌが東アジアを起源とする集団であろうことは示唆されるが、しかし、一方では、アイヌと他の東アジア諸集団の間で特にその出現頻度を異にする形質が15項目中5項目に認められた。これを簡単にまとめてみると、アイヌを特徴づける頭蓋の非計測的特徴は次のような集団の特徴と考えられる。 顎舌骨筋神経溝骨橋(高頻度)・・・・・・アメリカインディアン 舌下神経管二分(高頻度)・・・・・・アメリカインディアン 内側口蓋管骨橋(高頻度)・・・・・・北アフリカ、サハラ以南のアフリカ 眼窩上孔(低頻度)・・・・・・オーストラリア、サハラ以南のアフリカ 横頬骨縫合痕跡(高頻度)・・・・・・北東アジア これらの結果は、アイヌ、そして縄文人は恐らく東アジアをその地理的舞台として新化してきた集団の一員ではあろうが、計測結果と同様に、かなりgeneralizedな形質を今日まで比較的濃厚に残している集団であると考えられる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 埴原 恒彦: "現生人類の起源に関する最近の問題-形態学の立場から" 科学. 67(6). 459-467 (1997)
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[Publications] Tsunehiko Hanihara: "Craniofacial affinities of Mariana Islanders and circum-Pacific people" American Journal of Physical Anthropogy. 104(3). 411-425 (1997)
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[Publications] Tsunehiko Hanihara et al: "Os zygomaticum bipartitum : the frequency distribution of major human populations" Journal of Anatomy. (in press).
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[Publications] Tsunehiko Hanihara et al.: "A comparison of the frequency variation of discrete cranial trai in Ainu and major huma populations the world" International Journal of arctic health. (in press).
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[Publications] 埴原 恒彦: "生物の科学-遺伝" 裳華房 (印刷中),