1997 Fiscal Year Annual Research Report
分光プローブによるポリマーの構造ゆらぎとダイナミクスの研究
Project/Area Number |
09212201
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
迫田 和彰 北海道大学, 電子科学研究所, 助教授 (90250513)
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Keywords | 色素 / ポリマー / 高分子 / 位相緩和 / ホールバーニング / フォトンエコー / 単一分子分光 / フォノン |
Research Abstract |
(1)研究の目的:色素分子を非晶性高分子に分散させた試料を対象として、光学的位相緩和の機構、特に非晶質特有の素励起(アンダーソンの2準位系、TLS)の関与の有無を調べる。また、単一分子分光装置を作製して構造ゆらぎとダイナミクスの相関を解明する。 (2)研究成果:メソポルフィリンとポリビニルアルコール(PVA)から成る試料を作製し、吸収および発光スペクトルからメソポルフィリンの単量体と会合体の0-0吸収帯を同定した。次に、この0-0吸収帯について永続的ホールバーニング(分解能1MHz)およびヘテロダイン検出蓄積フォトンエコー(分解能0.7ps)の手法により、2〜50Kの温度領域において光学的位相緩和時間を測定した。飽和によるブロードニングを排除するため、測定は十分低光量で行なった。位相緩和時間は10K以下では概ね温度の1乗に、20K以上では概ね温度の2乗に逆比例することが判明した。ホールバーニングスペクトルに見られるフォノンサイドバンドの形状から、非晶性高分子に特有の低周波フォノンの状態密度を求め、これを用いてフォノンのラマン過程による位相緩和の温度依存性を数値計算により求めた。実測値に対するフィッティングから、メソポルフィリン単量体/PVAの位相緩和には、TLSのトンネリングと低周波フォノンのラマン過程の両者が寄与していることが、明らかになった。会合体形成に伴う双極子モーメントの増大を考慮すると、メソポルフィリン会合体の位相緩和時間の温度依存性を単量体のデータから算出することができ、その結果は実測値と極めて良く一致した。また、この結果はデバイ・ワーラー因子や吸収帯の不均一幅の実測値とも良く対応した。以上から、色素/高分子系の位相緩和機構が明らかとなり、長年の議論に終止符を打つことができた。他方、進行波型色素レーザーを光源とする単一分子分光装置を作製し、動作確認を行なった。
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