1997 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理分子動力学法によるセリア系酸化物中のプロトン伝導機構の研究
Project/Area Number |
09215227
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
下條 冬樹 広島大学, 総合科学部, 助手 (60253027)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星野 公三 広島大学, 総合科学部, 教授 (30134951)
|
Keywords | 高速イオン移動 / 超イオン伝導 / プロトン伝導 / ペロブスカイト酸化物 / 第一原理分子動力学法 / シミュレーション / 擬ポテンシャル / 理論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、理論的手法、主として第一原理分子動力学法により、ペロブスカイト型酸化物中のプロトン伝導現象のミクロな機構を解明することである。本年度は、以下のような研究を行った。 (1)セレート系酸化物Y-doped SrCeO_3中のプロトン伝導機構に関する研究 はじめに、プロトンが安定に存在し得る位置を特定した。プロトンの位置は、隣り合う二つのOイオンの間に存在し、プロトンは、片方のOイオンと強く結合している。プロトンは、二つのOを結んだ線分に関して、CeまたはYと反応側に位置している。SrCeO_3は、複雑な結晶構造をしているため、Ce、Y近傍それぞれに等価でないサイトが二つ以上あるが、どの位置においてもほぼ同様の特徴がある。プロトンの拡散経路には二種類ある。ひとつは、結合しているOイオンの周りを、接合を切らずに拡散する経路であり、もうひとつは、隣り合う二つのO間を、結合を切り替えて拡散する経路である。特徴的なことは、後者の拡散経路が二種類あることである。一つの八面体に属するOイオン間を結合を切り替えて移動する経路と、二つの八面体の頂点間を移動する経路である。その他、OHストレッチング振動、OH平均距離のサイト依存性などについても調べ、特徴的性質を明らかにした。 (2)酸素欠陥を導入したSrTiO_3中のプロトン伝導機構に関する研究 酸素欠陥を導入すると、周りのTiイオンは互いに遠ざかる方向に位置をわずかに変え、周りのOイオンは、酸素欠陥の方向へ格子振動の中心を動かすことができる。このことは、酸素欠陥の近傍では、Oイオンの八面体の配置が歪むことを意味し、欠陥の無い場合と異なる経路の拡散が可能となる。
|
-
[Publications] 宗尻修治: "The effective pair potential of exponded liquid caesium obtained by the inverse method" Journal of Physics : Condensed Matter. 9.16. 3303-3312 (1997)
-
[Publications] 下條冬樹: "Effects of doped accepter ions on proton diffusion in perovskite oxides : a first-principles molecular dynamics simulation" Journal of Physics : Condensed Matter. 10.2. 285-294 (1998)
-
[Publications] 下條冬樹: "Semiconductor-metal transition in fluid selenium : an ab initio molecular-dynamics simulation" Journal of Physics : Condensed Mater. 10.6. 1199-1210 (1998)
-
[Publications] 下條冬樹: "Photo-induced bond breaking in S_8 ring : in ab initio moleular-dynamics simulation" Journal of Physics : Condensed Matter. 10(掲載決定). (1998)
-
[Publications] 仙田康浩: "Ground State Geometries and Electronic Sates of Li-Na Clusters by an ab initio Pseudopotontial Calculation" Journal of Physics : Condensed Matter. 67.3(掲載決定). (1998)