1997 Fiscal Year Annual Research Report
非線形分光法を用いた中高密度流体中での溶媒和のダイナミクスの研究
Project/Area Number |
09216212
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 佳文 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60221925)
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Keywords | 超臨界流体 / 時間分解光カー効果 / フェノールブルー / 共鳴ラマン |
Research Abstract |
本研究では、中高密度流体中にとけた溶質分子に対する溶媒和エネルギーおよびその揺らぎの効果を検討するために、以下に述べる二つの実験的研究をおこなった。 (1)超臨界流体に対する時間分解光カー効果の測定 3次の非線形分光法である時間分解光カー効果の測定を超臨界流体である二酸化炭素および亜酸化窒素に対しておこなうことにより、その密度揺らぎおよび配向揺らぎの密度変化ならびに温度変化を検討した。いずれの流体においても光カー信号の時間変化は、比較的速い減衰を示す分子間振動に由来する成分と、長時間の回転緩和を示す成分から構成され、溶媒密度の増加によって回転成分の寄与が増大していくことがわかった。また臨界点近傍の測定により、これらの信号は臨界点近傍で見られる長距離の分子間相関にはあまり影響されないことが明らかになった。 (2)フェノールブルーの共鳴ラマンスペクトルの励起波長依存性 典型的なソルバトクロミズムを示す分子であるフェノールブルーの共鳴ラマンスペクトルは、その電子状態が溶媒によって大きく変化することを反映して、大きな溶媒効果を示す。極性あるいは水素結合性の溶媒で共鳴ラマンスペクトルの励起波長依存性を検討したところ、顕著な溶媒効果を示すC=OおよびC=N伸縮振動バンドが励起エネルギーに依存して変化することが明らかとなった。この現象は電子遷移エネルギーの揺らぎと振動遷移エネルギーの揺らぎが相関しているために生じたものと考えられる。実際に電子遷移と振動遷移がともに同じ熱浴モードに線形に結合した単純なモデル系に対して、3次の非線形光学感受率の表式に基づいて共鳴ラマンスペクトルを計算とたところ、共鳴ラマンスペクトルが励起エネルギーとともにシフトしうることがわかった。
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[Publications] T.Yamaguchi et al.: "The Excitation Energy Dependence of the Raman Stokes Shift : the ResonanceRaman Specma of Phenol Blue in Methanol" J.Chem. Phys.107. 4436-4438 (1997)
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[Publications] T.Yamaguchi et al.: "Solvent and Solvent Density Effects of the Spectral Shifts and the Bandwidths of the Absorpnon and the Resonance Raman Spectra of Phenol Blue" J.Phys.Chem.A.101. 9050-9060 (1997)
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[Publications] Y.Kimura et al.: "Effect of the Solvent density and species on the back-electron transferrate in the hexamethylbenzenel tetracyano ethylene charge-transfer conpley" J.Chen.Phys.108. 1485-1497 (1998)