1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09216225
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩田 耕一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (90232678)
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Keywords | 溶質-溶媒相互作用 / 溶媒和 / エネルギー散逸 / ピコ秒 / 時間分解ラマン / trans-スチルベン / クロロホルム / SDSミセル |
Research Abstract |
1.研究の背景と目的 溶液中のクラスターの研究例は少ない。クラスターサイズという基本的な情報を得る手段も未確立である。現在溶液中でのクラスター研究に適した新たな実験手法の開発が求められている。 本研究の目的は、時間分解ラマン分光計を「ピコ秒ラマン温度計」として利用して、溶媒和構造のより一般的な描像を得ることである。この目的のために、(1)同位体置換した溶媒中、および(2)ミセル溶液中での溶媒和構造や溶質-溶媒相互作用の研究を計画した。 2.研究の成果 (1)同位体置換した溶媒中での溶媒和構造と溶質-溶媒相互作用 溶質-溶媒相互作用の溶媒分子の振動構造への依存の有無を調べるために、光励起後の最低励起-重項(S_1)trans-スチルベンからのエネルギー散逸過程をクロロホルムおよびクロロホルム-d溶液中で測定した。実験結果の解析から、両者の間で溶媒和構造や溶質-溶媒相互作用の大きさにほとんど差がないと結論した。振動-振動共鳴エネルギー移動の寄与が明確に現れなかった。 (2)ミセル溶液中での溶媒和構造と溶質-溶媒相互作用 ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)とドデカン溶液中でS_1trans-スチルベンからのエネルギー散逸を観測した。SDSミセル溶液中ではドデカン溶液中に比べて(a)冷却の速度が大く、(b)時刻0での温度上昇が小さいことが分った。(a)は、溶質の冷却速度が溶媒分子間の熱伝導速度に支配されるという描像でよく説明できる。(b)は、溶媒和分子の数がSDSミセル中でより多いことを示唆する。 ミセル溶液では、通常の溶液と異なり、可溶化された溶質近傍とバルクとで分子種が異なる。今後ミセル溶液を研究することで溶液中での分子間エネルギー移動や溶媒和構造についての研究を促進できる可能性を示した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] K.Iwata and H.Hamaguchi: "Microscopic Mechanism of the Solute-solvent Energy Dissipation Probed by Picosecond Time-resolved Raman Spectroscopy" J.Phys.Chem.A. 101. 632-637 (1997)
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[Publications] K.Iwata and H.Hamaguchi: "Photoinduced Picosecond Bimolecular Reaction between trans-Stilbene and Carbon Tetrachloride" Bull.Chem.Soc.Jpn.70. 2677-2683 (1997)