1997 Fiscal Year Annual Research Report
特殊反応場触媒設計に役立つパラジウムクラスター錯体の化学
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09218233
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
黒沢 英夫 大阪大学, 工学部, 教授 (40029343)
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Keywords | パラジウム二核錯体 / ブタジエン錯体 / 構造解析 |
Research Abstract |
本研究の目的は、特殊反応場触媒の研究で大きな役割を果たすバルクパラジウムやバルク白金の表面吸着モデルとして、不飽和炭化水素を配位させたパラジウムクラスター錯体を合成し、表面の吸着分子の物理・化学的特性を、分子・原子レベルで解明することである。 1)Pd-Pd結合からの逆供与相互作用 Pd^I-Pd^I結合上に架橋配位する不飽和炭化水素の電子構造を調べるモデルとして、μ-アリルPd-Pd錯体の溶液安定性と構造特性を検討した。前者から、アリル基の電子吸引力が高まるほど2核錯体の安定性が高くなることが判明した。またX線結晶解析の実験から、アリルの2位炭素がPd-Pd結合方向へ引っ張られることが分かった。以上の特性を理解する目的で、モデル錯体Pd_2(PH_3)_2(μ-Br)(μ-C_3H_5)についてのMP2分子軌道計算を行ったところ、Pd-Pd結合に使われるd電子が、2位炭素に大きなロープを持つアリルπ^*軌道に逆供与相互作用を通じて流れ込んでいることが明かになった。 2)Pd-Pd距離の制御 Pd^I-Pd^I結合の距離は通常2.7Å程度が最も多く知られている。ところが2分子のブタジエンがPd-Pdをサンドウィッチ状にはさみ込んで配位する錯体[Pd_2(PPh_3)_2(μ-C_4H_6)_2]^<2+>のX線解析の結果は、この錯体のPd-Pd間距離が異常に長い3.2Åであることを示した。これを分子軌道法で解析したところ、上のアリル錯体と類似して、Pd-Pd間のd電子からジエンLUMOへの逆供与が起こり、これがPd-Pd距離の延伸を助けていることが判明した。このジエン錯体はアセトニトリルと反応して、アセトニトリルとホスフィンだけで配位した錯体、[Pd_2(PPh_3)_2(MeCN)_4]^<2+>を与えた。この錯体のPd-Pd距離は今までの例では最短の2.49ÅであることがX線解析から判明した。すなわちPd^I-Pd^I距離は、配位子の種類に応じて大きく伸縮することが明かになった。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] S.Sakaki, H.Kurosawa, et al.: "Geometries,Bonding Nature,and Relative Stabilities of Dinuclear Pdlladium(I)π-Allyl and Mononuclear Palladium(II)π-Allyl Complexes" Organometallics. 16. 2995-3003 (1997)