1997 Fiscal Year Annual Research Report
チオラート軸配位鉄ポルフィリンと一酸化窒素の配位化学的研究
Project/Area Number |
09235206
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樋口 恒彦 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教授 (50173159)
|
Keywords | NO合成酵素 / チオレート / ポルフィリン / シトクロムP450 / 共鳴ラマン / 軸配位子 / 酸化還元電位 / ヘム |
Research Abstract |
本研究者は従来構築されてなかった酸化反応に用いることの可能な安定なチオラート配位合成へム(Swan-resting型(SR)錯体と命名)を初めて合成することに既に成功している。ヘム-チオラートとNOの配位化学、反応化学に関してはNOSやP450norとの関連から重要と考えられがあまり明らかになっていない。したがって本錯体を用いてNOとの配位化学、構造および反応を検討していき、得られた知見を生体系にフィードバックさせることにより2つの酵素の化学の理解に役立てることを目的として研究を行った。以下に本年度の研究成果を示す。 I.まず、SR錯体が安定にNOと1:1錯体を形成し得るか検討を行った。その結果、生成した錯体の電子スペクトルは酵素であるP450cam,P450norのNO錯体のそれと良く一致した。さらに生成に成功したNO-SR(Fe^<III>錯体を1電子還元することによりNO-SR(Fe^<II>)錯体の生成にも成功した。 II.生成したNO-SR(Fe^<III>)錯体の錯形成に関わるN-Fe結合およびN-O結合の状態を検討するために赤外吸収および共鳴ラマンスペクトルの測定を行った結果、N-Fe結合の振動は511cm^<-1>,-O結合は1828cm^<-1>と、どちらもNOS,P450cam,P450norそれぞれのNO錯体の結合状態にかなり近い値を示し妥当性が示された。 III.錯体の電気化学的性質についても検討した結果、NOの配位した錯体は配位していないものに比較して還元電位は高く酸化電位は低くなり、より還元されやすくまた同時に酸化もされやすいredox activeな錯体へと変化したことになる。 以上調製に成功した本錯体は、合成したヘム-チオラートのNO錯体としての初めての例となった。本錯体の諸性質に関する知見はNOSその他のNO関連ヘム-チオラート酵素の化学的理解に役立つと考えている。
|
-
[Publications] Yasuteru Urano: "Pronounced Axial Thiolate Ligand Effect on the Reactivity of Highvalent Oxo-iron Porphyrin Intermediate" J.Am.Chem.Soc. 119. 12008-12009 (1997)
-
[Publications] Tomoteru Shingaki: "Regio- and stereo selective oxidation of steroids using 2.6-dichlorophyridine N-oxide catalysed by ruthenium porphyrin" Chem.Commun. 861-862 (1997)
-
[Publications] 樋口恒彦: "シトクロムP450におけるチオレート軸配位子の役割〜モデルからのアプローチ〜" ポルフィリン. 6(2). 77-83 (1997)