1997 Fiscal Year Annual Research Report
鉄イオンによるトランスフェリンの分子スイッチ機構:高次構造変換過程のX線結晶構造解析
Project/Area Number |
09235215
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
広瀬 正明 京都大学, 食糧科学研究所, 教授 (60026523)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 穂波 京都大学, 食糧科学研究所, 助手 (90252519)
高橋 延行 京都大学, 食糧科学研究所, 助手 (20252520)
三上 文三 京都大学, 食糧科学研究所, 助教授 (40135611)
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Keywords | トランスフェリン / オボトランスフェリン / X線結晶構造解析 / 分子スイッチ / 高次構造変換 / 鉄イオン |
Research Abstract |
トランスフェリンは血中の鉄イオンを強固に結合し、標的細胞に運搬する機能をもつ。鉄イオンの標的細胞への取り込みに際しては、鉄結合によるトランスフェリンの高次構造変換が分子スイッチとして働き、続くレセプターとの特異的結合のトリガーとなる。この機構を明らかにするため、オボトランスフェリンを用いてX線結晶構造解析を行った。本蛋白質は、相同な2つのローブ(N一ローブとCローブ)から成り、各ローブはトリプシン処理により分離できる。そこで、N-ローブのホロ型とアポ型を用いて高分解能の解析を行い、高次構造変換の機構を明確にすることを試みた。ホロ型はポリエチレングリコール中、アポ型は硫酸アンモニウム中から良質の単結晶を得、重原子置換、回折データの収集、並びにモデリング・リファインメントを行った。その結果、ホロ型では1.65Å、アポ型では1.90Åの分解能で全原子座標を決定した.これらのデータは、トランスフェリンファミリーの構造のうち、現在最も高精度のものである。ホロ型とアポ型の構造比較から、鉄イオンの結合によって起こる高次構造変換の要点は:1)アポ型はホロ型に比べ、Met331とVal247のCaを通る軸を中心にドメイン-1とドメイン-2の間が49度開いた構造をとる。2)鉄イオンに配位する4つのアミノ酸側鎖(Asp60/Tyr92/Tyr191/His250)のホロ型における相対的な配置は、ドメイン-2に位置するTyr92-Tyr191間はアポ型でも良く保持されているのに対し、ドメイン-1に位置するAsp60とHis250は、アポ型で大きく離れていた3)ホロ型では、鉄結合サイトの近傍に位置するLys209とLys301のNZが2.7Åの近距離にあり水素結合による鉄結合の安定化に寄与している。これに対しアポ型ではその特異的相互作用が完全に失われていた。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 水谷公彦: "Structural characteristics of disulfide-reduced ovotransferrin N-lobe analyzed by proteinfragmentation" Bioscience,Biotechnology and Biochemistry. 61(4). 641-646 (1997)
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[Publications] 宮内継夫: "Periplasmie secretion of functional ovotransferrin N-lobe in E.coli." Bioscience,Biotechnology,and Biochemistry. 61(12). 2125-2126 (1997)