1997 Fiscal Year Annual Research Report
重合反応規制のためのマルチメタリック分子触媒の設計
Project/Area Number |
09238206
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相田 卓三 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (00167769)
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Keywords | ルイス酸 / チタン錯体 / マルチメタリック触媒 / ε‐カプロラクトン / オキロタン / アニオン重合 / カチオン重合 / リビング重合 |
Research Abstract |
我々は、金属ポルフィリン錯体とかさ高いルイス酸からなるマルチメタリックシステムが高度に制御された高速な高分子合成に有効であることを見いだし、より一般的な系への展開をはかっている。金属ポルフィリン錯体を用いた系では、これが求核剤として、一方、ルイス酸がモノマー活性化剤として機能し、重合反応が副反応を伴わず、かつ極めて高速に進行する。本研究では、分子設計の容易さ等を考慮し、マルチメタリック系を実現するための金属錯体として、テトラフェノール配位子の金属錯体を考えた。本年度は、その予備段階として、そのハーフ錯体に相当する二つのフェノール水酸基を有する配位子から誘導されるチタン錯体の重合能を検討した。 塩素とアルコキシ基を配位子とするハーフチタン錯体は、7員環の環状エステルであるε‐カプロラクトン(CL)をアニオンリビング重合させ、分子量分布の狭いポリエステルを与えた。重合が完結した系に新たにCLを加えたところ、CLの重合が引き続き進行し、狭い分布を保ったまま分子量が増加した。これとは対照的に、類似の条件下、カチオン重合性が極めて高い4員環の環状エーテル:オキセタンは全く重合しなかった。一方、ジクロロ錯体に等モル量の銀トリフルオロメタンスルフォネートを加えることで生成する錯体は、オキセタン(OX)のカチオン重合を引き起こし、分子量分布の狭いポリエーテルを与えた。詳しい検討から、成長ポリマーの片末端はトリフレート(求電子種)に、もう片末端はチタンアルコキシド(求核種)になっていることが分かった。そこで、ここに4級アンモニウム塩を加えて、OXの重合を停止させた後、CLを加えたところ、CLの重合が引き続き進行し、分子量分布の狭いOXとCLのブロック共重合体が生成した。これは、カチオンリビング重合とアニオンリビング重合をワンポットで実現した初めての成功例である。
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