1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09238237
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
伊藤 敏幸 岡山大学, 教育学部, 助教授 (50193503)
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Keywords | 不斉合成 / トリブチルスタニルシクロプロパン / パラジウム触媒によるホモカップリング反応 / トリメチルシリルシクロプロパン / トリブチルスタニルジフルオロシクロプロパン / キラルジフルオロシクロプロパンモノアセタート |
Research Abstract |
本研究は,キラルなメタルシクロプロパンの簡便な合成法を開発すること,ついで,シクロプロパンのキラル炭素上での金属-炭素結合の切断と炭素-炭素結合形成について反応開拓を行うことを目的とする。その素材としてトリブチルスタニルシクロプロパンの不斉合成を検討した。その結果,(1)対応するラセミ体ジアセタートをPseudomonas cepacia lipase(PCL)で加水分解し光学分割する,(2)PCL光学分割法で合成したキラルなビニルスズをジアステレオ選択的にシクロプロパン化するという,二つの方法で4種の新規トリブチルスタニルシクロプロパンを光学的に純粋(>98%ee)に得ることが出来た。シクロプロピルスズが合成できたので,次にスズ基の官能基変換を検討し,(1)フェニル化,(2)ホルミル化を経由するスズ基のビニル基への変換,(3)ヨウ化銅存在下パラジウム触媒によるホモカップリング反応を達成した。 トリメチルシリル基も様々な官能基変換ができることがよく知られている。そこで,次にトリメチルシリルシクロプロパンの合成を検討した。γ-ヒドロキシビニルシランについて酢酸ビニルをアシルドナーに用いてPCLを作用させ不斉アシル化を行いキラルなヒドロキシビニルシランを合成した。これを加水分解したのちシクロプロパン化を行い目的とするキラルなトリメチルシリルシクロプロパンを光学的に純粋(>98%ee)に得ることができた。 さらなるシクロプロパン化合物の合成を検討することにした。フッ素化合物は機能性材料並びに医薬・農薬の両面で急速にその価値が認識されつつあるが,ジフルオロメチレン基を有する化合物の合成例は少ない。そこで,ジフルオロシクロプロパン化合物に着目してその不斉合成を検討した。その結果,キラルなヒドロキシビニルスズにジフルオロメチルカルベンを作用させてトリブチルスタニルジフルオロシクロプロパンを合成した。さらに,プロキラルなジフルオロシクロプロパンジアセタートについても,PPL加水分解で対応するキラルモノアセタートが85%ee-96%eeの光学純度で得られることがわかった。ジフルオロシクロプロパンのリパーゼ不斉合成の最初の例である。今後は,これら開発できたシクロプロパンを素材に用いて,メタルシクロプロパンの化学を発展させるべく研究を行っていきたいと考えている。
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[Publications] Itoh,T. ; Takagi,Y. ; Tsukube,H.: "Review : Synthesis of Chiral Building Blocks for Organic Synthesis via Lipase-Catalyzed Reaction ; New Method of Enhancing Enzymatic Reaction Enantioselectivity" J.Molecular Catalysis B : Enzymatic. 3・6. 261-270 (1997)
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[Publications] Itoh,T. ; Emoto,S. ; Kondo,M.: "Synthesis of Enantiomerically Pure Trubutylstannylcyclopropanes" Tetrahedron. (in press). (1998)