1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09239218
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
吉村 敏章 富山大学, 工学部, 教授 (10158503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 孝宣 富山大学, 工学部, 助手 (00283060)
小野 慎 富山大学, 工学部, 講師 (10214181)
森田 弘之 富山大学, 工学部, 教授 (90089813)
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Keywords | チアザイン / X線構造解析 / スルホキシイミン / 分子内脱離 / 反応速度論 / 加水分解 / pKa / S_N1 |
Research Abstract |
チアザイン類(R^1R^2R^3S≡N) は硫黄と窒素の三重結合を持つ非常に珍しい化合物で、我々はこれまでジフェニル系でいくつかの基本的なチアザインを合成してきたが、このうち最初に見出したS-アルコキシチアザインについて合成と反応性を詳しく検討した。S,S-ジフェニル-S-フルオロチアザインとアルコキシドと反応させることによって対応するS-アルコキシチアザインを60〜95%の収率で得た。そのうちS,S-ジフェニル-S-プロポキシチアザイン1cについてはX-線によって構造を明らかにした。1cの結晶中の構造はC(3)C(2)C(1)OSN面に対して対称な、硫黄を中心に歪んだテトラヘドラル構造をとっており、SN結合距離は1.441A^^○Åでかなり短く、三重結合性がかなりあることが分かった。 S-アルコキシチアザインをトルエン中で60℃以上に加熱するとアルコキシ基がカルボニル化合物として脱離し、N-未置換のスルフィルイミンを与えた。そこでこの反応の構造を速度論的に検討した結果、反応は一次速度式に従い、負の活性化エントロピー(ΔS^t=30JK^<-1>もl^<-1>),大きな重水素同位体効果(k_Hk_D=6.1),小さな負のハメットのrho値-0.35等が得られたことより、反応は五員環の遷移状態を通る協奏型の分子内脱離機構で進行することが示唆され、四配位型の化合物では大変珍しい分子内脱離機構が明らかとなった。 S-アルコキシチアザインは水を多く含む稀薄溶液中で速やかに加水分解して対応するアルコールとS,S-ジフェニルスルホキシイミンを与えた。^<18>Oトレーサー実験、及び反応速度がチアザインと水素イオン濃度に1次であること、1級アルキル基の構造による変化は少ないがイソプロピル誘導体1dが1aの1090倍も速いこと、ネオペントキシ誘導体1fの反応では3-メチル-2-ブタノールが得られたことから1d,1fはS_N1で進んでいるものと考えられる。さらに1cを用いてハメットのrho値-0.42が得られたことから、反応は前段のプロトン化の速い平衡に続きS_N1又はS_N2でスルホキシイミンとアルキル基が切れるところが律速であると考えられ、1fのpH-rete profilcからpKaとして5.02という値が得られた。このようにアルコキシチアザインは非常に弱い酸によっても触媒され穏やかな条件でS_N1が起こるほどスルホキシイミンの部分が非常に良い脱離基であることが分かった。
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Research Products
(1 results)