1997 Fiscal Year Annual Research Report
多くの硫黄原子を含んだπ電子系配位子を有する有機金属錯体の開発とその新機能
Project/Area Number |
09239231
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松林 玄悦 大阪大学, 工学部, 教授 (90029182)
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Keywords | X線結晶解析 / ジチオレート錯体 / シクロペンタジエニル錯体 / 白金錯体 / コバルト錯体 / 酸化還元電位 / 電導度 |
Research Abstract |
多くの硫黄原子を含んでπ電子系を配位子分子軸方向に一層拡張することにより、硫黄原子を介した多次元的分子間相互作用を拡大しうるエチレンジチオテトラチアフルバレンジチアラト配位子(etdt配位子)とともに有機基を有する遷移金属錯体を合成して、錯体分子集合体としての新しい物性・機能を見い出すことを目指した。 まず、C_8H_4S^<2->_8(etdt)配位子の前駆体であるetdt(CH_2CH_2CN)_2を得て、Na_2etdtを発生させて[PtCl_4]^<2->塩と反応させ、[Pt(etdt)_2]^<2->錯体を得た。これとヨウ素との反応によって得られる酸化体は高い電導度を示すことを明らかにした。また、Na_2etdtとCo(η^5-C_5H_5)(CO)I_2あるいはCo(η^5-C_5H_5)(CO)I_2と反応させてCo(η^5-C_5H_5)(etdt)およびCo(η^5-C_5Me_5)(etdt)を合成した。さらに、相当するC_3S^-_5(dmit)配位子をもつCo(η^5-C_5H_5)(dmit)およびCo(η^5-C_5Me_5)(dmit)を合成した。etdt(CH_2CH_2CN)_2およびCo(η^5-C_5H_5)(dmit)のX線結晶解析を行い、これらは結晶中でいくつかの硫黄原子を介した一次元的分子間相互作用をもつことを明らかにした。dmit錯体については、臭素との反応による酸化過程を明らかにし、そのうちη^5-C_5Me_5基を有する錯体については、臭化物イオンを含む酸化体を単離した。その電導度は10^<-6>Scm^<-1>(温室)であった。Co-(η^5-C_5H_5)(etdt)は低い電位で容易に酸化され、ヨウ素との反応によって得られる酸化体Co-(η^5-C_5H_5)(etdt)I_3は室温で0.19Scm^<-1>という高い電導度を示した。平面性からかなりはずれた分子構造であるにもかかわらずこのような優れた電動性は、etdt配位子中の多くの硫黄原子による効果的な分子間相互作用によるものと考えられる。
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Research Products
(1 results)