1997 Fiscal Year Annual Research Report
裸の15および16族典型元素と遷移金属から構成されるπ共役系の構築
Project/Area Number |
09239243
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
吉田 壽勝 大阪府立大学, 総合科学部, 教授 (50029443)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 龍雄 大阪府立大学, 総合科学部, 助手 (90151795)
安達 知浩 大阪府立大学, 総合科学部, 講師 (20079057)
植村 元一 大阪府立大学, 総合科学部, 教授 (90047241)
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Keywords | π共役系 / ヘテロクムレン / ビス(ヒドロスルフィド)錯体 / phosphinidene錯体 / tetraphosphacyclobutadiene錯体 |
Research Abstract |
MoおよびRuなど遷移金属とカルコゲンやリンなどの裸の典型元素から構成されるπ共役系S=Mo-S-Ru-S-M=SやSe=Mo-Se-Mo=SeおよびM'=P=M=P=M'の構築を目的としてその合成法を開発し、それらの結合性や物性を解明するため、π共役系S=Mo-S-Ru-S-M=Sの合成原料として黄色結晶trans-Ru(SH)_2(anti-L)(L=Me_8[16]aneS_4,Me_4[14]aneS_4)を相当するジクロロ錯体trans-RuCl_2LとNa_2Sから合成した。更に、cis-RuCl_2LとNa_2Sとの反応ではcis-Ru(SH)_2Lが生成することを見い出し、これらtrans-およびcis-ビス(ヒドロスルフィド)錯体の構造をX線構造解析により解明した。一方、π共役系M'=P=M=P=M'の出発原料である無機phosphinidene錯体trans-M(PH)_2(dppe)_2(M=Mo,W)はtrans-M(N_2)_2(dppe)_2(M=Mo,W)と黄リンとの反応で合成した。本反応においては、tetraphosphacyclobutadiene錯体M(η^4-cyclo-P_4)(dppe)_2(1;M=Mo,2;M=W)が主生成物として得られ、cyclobutadiene錯体に類似したその構造には興味が持たれ、その結合性や反応性を調べた。X線構造解析の結果、1と2は等構造をとり、square planarなη^4-cyclo-P_4と2分子のdppe配位子の4つのP原子のなす面が互いにstaggeredで、8つのP原子を頂点とする大きく歪んだsquare antiprism構造をとっている。η^4-cyclo-P_4のP1-P2-P1'およびP2-P1-P2'角はそれぞれ89.0(5)と90.9(5)°であり、P-P距離は2.162(9)(P1-P2)と2.168(9)Å(P1-P2)で、完全な正四角形をとる。これらのP-P距離はP=P距離2.00-2.03Åよりも長く、P-P単結合距離2.20-2.30Åより短い。1と2のη^4-cyclo-P_4-M結合とシクロブタジエン錯体の結合性の違いを解明するため、モデル化合物M(η^4-cyclo-P_4)(PH_3)_4(M=Mo,W)についてEHMO計算を行った。η^4-cyclo-C_4H_4-M結合はσ結合とπ逆供与結合から成立しているのに対して、cyclo-P_4のπ_1軌道(a_1)は-17eVと非常に低位にありs結合の寄与は無視できるほど小さい。η^4-cyclo-P_4-M結合ではcyclo-P_4のπ_2,π_3(e)からM(d_<x2>,d_<y2>)へのπ供与に加えて、M(d_<xy>)からcyclo-P_4のLUMO(b_2)への逆供与によるδ結合が大きく寄与している。この特異な結合性を反映して、η^4-cyclo-P_4-M結合軸回りの回転障壁は1では60,2では67kcal/molと非常に大きい。
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