1997 Fiscal Year Annual Research Report
熱フィラメントアシストスパッタ法によるカ-バイン複合 膜の物性評価と制御
Project/Area Number |
09243218
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
上村 喜一 信州大学, 工学部, 助教授 (40113005)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小沼 義治 信州大学, 工学部, 教授 (40020979)
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Keywords | 炭素 / Carbyne / 熱フィラメント / スパッタリング / Chaoite |
Research Abstract |
報告例が少なく、特性もあまり知られていない薄膜状の結晶性炭素(カ-バイン)のポリタイプの1つであるChaoiteを生成した。生成装置には、通常のスパッタ装置にタングステンをコイル状にした熱フィラメントを設置したものを用いた。 結晶学的及び化学的結合状態の評価より、熱電子放出源として用いたタングステンンフィラメントを1800℃以上に加熱することは、炭素の結晶化及び薄膜状のカ-バインの生成に有効であった。また、カ-バインを含んだ炭素の状態図によると、カ-バイン相は約2300℃以上で生成するとされているが、本研究ではこのフィラメントの使用により、基板上で600℃、タングステンフィラメント周囲でも2000℃と、いずれにしてもこれまでよりも低温で、また容易に薄膜状態のカ-バインの生成が可能となった。カ-バインの生成にはいくつかの報告例があるが、薄膜状のカ-バインを熱フィラメントを用いて生成したものは、現在のところ例がない。 また、カ-バイン薄膜の結晶性は基板温度の変化により制御することが可能であった。特に、基板温度600℃、タングステンフィラメント温度2000℃で生成したカ-バイン薄膜は、単結晶部分を多く含む薄膜で、結晶粒も大きく、配向性の強い薄膜であった。 また、カ-バインの結晶粒径は、XRD、FE-SEM、TEMでほぼ一致し、約700Åの大きさであった。 カ-バインは未知の物質とされているが、本研究により、その結晶学的特性の一部は明らかとなった。カ-バインの持つその他の諸特性を明らかにすることにより、各種電子材料への応用も期待できると思われる。
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