1997 Fiscal Year Annual Research Report
アポトーシスを制御する転写調節機構の分析に立脚した白血病の分子発癌機序の解明
Project/Area Number |
09254256
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
稲葉 俊哉 自治医科大学, 医学部, 講師 (60281292)
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Keywords | アポトーシス / 転写調節因子 / E4BP4 / E2A-HLF / SLUG / CES1 / caspase / Bcl-2ファミリー |
Research Abstract |
アポトーシスを制御する転写調節因子の検討は当研究室の中心的研究課題として、長年にわたり多くの研究室との共同研究で継続的に検討を進めているものである。本年度は特にサイトカイン依存性に発現し、アポトーシスを抑制する転写調節因子としてわれわれのグループが同定したE4BP4転写因子に関して、その下流の標的因子の検討を行った。まず、線虫ではE4BP4に相当する転写因子CES2の標的因子が、別の転写因子CES1であることが判明していることから、われわれは哺乳類におけるCES1相当因子の同定を試みたところ、その一つとしてZnフィンガー型転写因子SLUGを同定した。SLUGは神経発生途上で重要な役割を果たすことが既に報告されているが、アポトーシスを抑制する機能との関連性については今後の検討課題である。次にE4BP4が下流のアポトーシス制御因子である。Bcl-2ファミリーやcaspaseに対して与える影響を検討した。E4BP4は、Bcl-2ファミリー因子の転写には影響を及ぼさず、またBcl-2ファミリーが制御しているcaspaseの活性についても何ら抑制効果を示さなかった。このことからE4BP4の標的因子はcaspaseのさらに下流にあって、ゲノムDNAの断片化や細胞骨格の解体、ミトコンドリア膜の恒常性の維持などを制御している蛋白質であることが示唆された。こうした因子の同定が今後の課題である。 白血病の分子発癌機構とこれらの転写因子の関連については、E4BP4と機能を同一にする、ヒト17;19転座型急性リンパ性白血病より単離されたE2A-HLFキメラ因子がやはりBcl-2やcaspaseと独立してアポトーシスを抑制することを解明した。ここでも標的因子の同定が次年度の重要課題である。
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[Publications] Inukai T., Inaba T., Yoshihara t., Look A.T.: "Cell transformation mediated by homodmeric E2A-HLF transcription factors." Mol.Cell.Biology. 17. 1413-1424 (1997)
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[Publications] Ikushima S., Inukai T., Inaba T., Nimer S.D., et al: "Pivotal role for the NFIL3/E4BP4 transcription factor in IL-3-mediated survival of pro-B lymphocytes." Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 94. 2609-2614 (1997)
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[Publications] Ito K., Ueda Y., Kokubun M., Urabe M., Inaba T., Mano H., et al.: "Development of a novel selective amplifier gene for controllable expansion of transduced hematopoietic cells." Blood. 90. 3884-3892 (1997)