1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09256203
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 祐輔 東京大学, 医科学研究所, 教授 (70217909)
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Keywords | p53遺伝子 |
Research Abstract |
p53遺伝子はヒトのがんにおいて最も高頻度に遺伝子異常が検出されている遺伝子である。したがって、この遺伝子産物によって発現調節を受けている遺伝子を見つけることは、発がん機構の解明のみならず、新たながんの診断・治療法の開発につながると期待される。そこで、ディフェレンシャルディスプレー法や酵母細胞に遺伝子導入して直接p53蛋白が結合するゲノムDNAをクローニングする方法などのアプローチ法を用いてp53標的遺伝子の単離・同定を試みた。これまでに既知・未知の遺伝子を含め20種類以上の遺伝子がp53によって直接あるいは間接的に発現制御を受けていることを明らかにした。このうち、GML遺伝子は食道がん細胞株を用いた実験により、薬剤や放射線に対する感受性に関与することが示された。BAI1遺伝子は脳特異的に発現している遺伝子であり、その遺伝子産物は血管新生抑制に働いている可能性が示唆された。また、P2XM遺伝子は筋特異的に発現しているATPチャンネルであり、一部の軟部腫瘍で発現の低下していることが明らかになった。また、APC不活性化と大腸腫瘍発生機序の詳細な仕組みを明らかにすることを目的に、APC遺伝子に明らかな異常を認めなかった57例の大腸がんのおけるβカテニン遺伝子の異常を調べた。その結果、7症例においてエクソン3を含む数百塩基対のゲノムDNAの欠落により、このエクソン部分の欠けた分子量の小さい遺伝子産物が作られ、この蛋白の細胞内への蓄積が起こっていることを明らかにした。さらに、MASA法を用いた大腸がんリンパ節転移診断については、1994年よりプロスペクティブな検討を開始しており、現在までに得られた結果では、遺伝子レベル陰性症例では全く再発を認めておらず、遺伝子レベルでのリンパ節転移診断がより正確な予後判定の指標となりうることを支持するものであった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] S.Hayashi et al.: "Isolation of murine and human homologues of the fission-yeast dis3+ gene encoding a mitotic-control protein and its overexpression in cancer cells with progressive phenotypes." Cancer Res.57. 921-925 (1997)
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[Publications] Y.Kimura et al.: "Genomic structure and chromosomal localization of GML(GPI-anchored molecule-like protein),a gene induced by p53." Genomics. 41. 477-480 (1997)
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[Publications] Y.Kimura et al.: "GML sensitizes cancer cells to Taxol by induction of apoptosis." Oncogene. 15. 1369-1374 (1997)
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[Publications] H.Nishimori et al.: "A novel brain-specific p53-target gene,BAI1,containing thrombospondin type1 repeats inhibits experimental angiogenesis." Oncogene. 15. 2145-2150 (1997)
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[Publications] H.Shibata et al.: "Rapid colorectal adenoma formation initiated by conditional targeting of the APC gene." Science. 278. 120-123 (1997)
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[Publications] K.Iwao et al.: "Activation of the β-catenin gene by interstitial deletions involving exon 3 in primary colorectal carcinomas without APC mutations." Cancer Research. (in press).