1997 Fiscal Year Annual Research Report
感染者末梢血中に存在する感染性HIV-1の量的および質的変化と病態との関連
Project/Area Number |
09258220
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
加藤 真吾 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10177446)
|
Keywords | HIV-1 / 血漿 / 末梢血単核球 / 感染性 / competitive nested RT-PCR / 併用療法 / 薬剤耐性 / 予後判定 |
Research Abstract |
現在、HIV-1感染症の治療には、逆転写酵素阻害剤とプロテアーゼ阻害剤を含む多剤併用療法が最も一般的に行われている。この治療法を有効に施行するためには、その抗HIV-1効果と薬剤耐性ウイルスの出現を的確に追跡することが重要である。抗HIV効果の判定は、血漿ウイルスRNA濃度の変化によって行われているが、感染細胞数を反映する末梢血単核球(PBMC)中のHIV-1DNA濃度や、HIV-1の実質的な活動を反映するPBMC中の感染性HIV-1濃度はあまり測定されていない。そこで本研究では、多剤併用療法において、これら3種類のHIV-1濃度の経時変化が免疫学的指標であるCD4値や薬剤耐性ウイルスの出現とどのような関係があるかを検討した。 対象は過去2年の間に荻窪病院で多剤併用療法を開始した血友病患者7人とした。血漿中HIV-1 RNA濃度は、末梢血血漿からQIAamp Viral RNA Kitを用いて抽出したRNAを試料としてcompetitive nested RT-PCRによって測定した。PBMC中HIV-1 DNA濃度は、PBMCからQIAamp Blood Kitを用いて抽出したDNAを試料としてcompetitive nested PCRによって測定した。PBMC中の感染性HIV-1と薬剤耐性HIV-1の定量はplaque hybridization assayによって行なった。 7症例中2症例では、CD4値と3種類のHIV-1濃度のいずれも併用療法開始前と比べて変化しなかった。これはプロテアーゼ阻害剤(サキナビル)の血中濃度が十分上昇しなかったためではないかと考えられる。それ以外の症例では、CD4値が上昇し、HIV-1 RNA濃度と感染性HIV-1濃度が減少した。しかし、そのうちの3症例でその後薬剤耐性HIV-1が検出され、それに伴ってCD4値の減少とこれら2種類のHIV-1濃度の上昇が観察された。HIV-1 DNA濃度の減少がみられたのは治療効果が認められた5症例のうちの1症例のみであった。この症例のCD4値の増加数は全症例中最も高かった。以上の結果から、多剤併用療法の成否を決める主要な因子はHIV-1の薬剤耐性の獲得であると考えられた。また、長期的治療効果を予測する指標としてHIV-1 DNA濃度が重要であることが示唆された。
|
Research Products
(1 results)