1997 Fiscal Year Annual Research Report
転写制御因子GATAのcAMPに応答する分解のメカニズム
Project/Area Number |
09267220
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前田 正知 大阪大学, 薬学部, 教授 (80190297)
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Keywords | 転写制御因子 / DNA結合蛋白質 / GATA / cAMP / 蛋白分解 / プロテオリシス / プロテアソーム |
Research Abstract |
胃壁細胞に特異的に発現するプロトンポンプ(H^+/K^+-ATPase)の転写調節機構の研究を行う過程で、新たな転写制御因子を発見した。それらはGATA-DNA結合蛋白質に分類可能であったが、所謂血液系細胞に見つかるものとは異なっていた。新しい転写制御因子GATA4(=GATA-GT2)とGATA-6(=GATA-GT1)は、消化管のみならず心臓の発生にも決定的な役割を果たしており、重要性が認識されつつある。特にGATA-6にはDNA結合領域にAキナーゼとCキナーゼによって、共通にリン酸化されうるセリン残基が存在するため、細胞内情報伝達系により機能が制御されている可能性がある。 ラットのGATA-6をCHO-K1細胞に安定に発現させると、核に局在しているが、細胞内cAMP濃度を上昇させると消失した。同様の変化はCキナーゼを活性化しても起こらず、Aキナーゼによる活性化経路に特異的であることが明らかになった。また種々プロテアーゼ阻害剤を検討したところ、最終的にプロテアソームが関与していることが示唆された。この現象は、発生や分化に役割を果たす転写制御因子を抑制する機構の一つと考えられる。 ブラストサイジンデアミナーゼ遺伝子のプロモーターに、GATA-6の結合配列を2個または8個直列につないだ発現プラスミドを構築した。この発現プラスミドを導入した細胞では、GATA蛋白質依存的にブラストサイジンデアミナーゼを発現することが期待される。実際、GATA-6を発現させたCHO-K1細胞にこのプラスミドを導入すると、ブラストサイジン抵抗性を獲得するがジブチリルcAMPを添加するとGATA-6が分解し、したがって抵抗性が消失した。このような細胞を用い、ジブチリルcAMPが存在しても生育できる変異細胞を分離し、cAMPからプロテアソームにつながる経路にかかわる因子を明らかにすることが可能になった。
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[Publications] Reiko Nakagawa 他: "Gastric GATA-6 DNA-binding protein : proteolysis induced by cAMP" FEBS Letters. 408. 301-305 (1997)
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[Publications] Takao Yoshida 他: "GATA-6 DNA binding protein expressed in human gastric adeno carcinoma MKN 45 cells" FEBS Letters. 414. 333-337 (1997)
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[Publications] Tsuyoshi Nishi 他: "Transcriptional activation of H^+/K^+-ATPase genes by gastric GATA binding proteins" Journal of Biochemistry. 121. 922-929 (1997)
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[Publications] 前田正知 他(分担): "消化管ホルモンXV" 消化管ホルモン研究会 編・医学図書出版, 8 (1997)