1997 Fiscal Year Annual Research Report
海馬皮質における視床入力情報処理回路の形態学的解析
Project/Area Number |
09268241
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience |
Principal Investigator |
石塚 典生 (財)東京都神経科学総合研究所, 神経細胞生物学研究部門, 副参事研究員 (90126201)
|
Keywords | 視床前核 / 前海馬台 / 脳梁後部皮質 / Papetz回路 / 嗅内野 / PHA-L |
Research Abstract |
記憶情報処理は、海馬体ー嗅内野系と乳頭体ー視床前核に代表される間脳系との相互作用で行われている。本研究では、海馬体・嗅内野系に対し視床投射線維がどのように関与するかを形態学的に解析している。平成9年度は、視床前核群から入力を受ける前海馬台の皮質性入出力結合について、ラットを用い、PHA-L,WGA-HRPなどのトレーサー方によって解剖学的に調べた。 皮質性入力:同側海馬台の乳頭体投射細胞、内側嗅内野のIII層細胞(両側)、II・V層細胞(同側)、嗅脳溝周囲皮質III・V層細胞(同側)、顆粒性脳梁後部皮質V層細胞(両側)からの投射があった。また、無顆粒性脳梁後部皮質III・V層、および前障からも少量の投射があった。 皮質性投射:主として内側嗅内野と前海馬台へ投射した。そして、前海馬台II層細胞は両側の前海馬台内の長軸方向の連合性結合に関与し、III層細胞は両側嗅内野III層に濃密に投射することが判った。また、III層細胞からは、前海馬台VI層への結合も見られた。前海馬台VI層からは、同側の内側嗅内野V/VI層への投射があった。ほかに、前海馬台からは、顆粒性脳梁後部皮質、前頭葉皮質へも少量の投射が見られたが、外側嗅内野への投射は明らかでなかった。 この研究によって,視床入力が複数の経路によって内側嗅内野に収斂することが明らかとなった。すなわち、AD核、AM核はV-VI層に直接投射するとともに、AV・AD核からの入力は前海馬台を経由して、内側嗅内野I、III、VI層へ投射する。さらに、CA1からはVI層に、海馬台からはV層に投射している。Papez回路を経由して海馬および周辺皮質へ戻ってくる回路は非常に複雑であり、今後、視床入力情報が海馬領域でどのように広がり、どのような回路を形成しているかを知るためには、それぞれの皮質領野での局所回路の形態解析が必要である。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] 石塚典生、本多祥子: "視床入力を受ける海馬台・前海馬台の入出力結合様式の解剖学的解析" 東京都神経科学総合研究所年報. 25. 86-88 (1997)
-
[Publications] Honda,Y, Ishizuka,N: "Afferent and efferent connections of the lamina principalis externa of the rat presubiculum." Neurosci.Res.Suppl.21. S262- (1997)
-
[Publications] 石塚典生: "記憶のしくみー解剖学的な面から" Clin.Neurosci.16. 130-134 (1998)
-
[Publications] 石塚典生: "海馬領域と扁桃体の神経回路" 神経精神薬理. 20(7)(印刷中). (1998)
-
[Publications] 石塚典生: "「側頭葉」(板倉徹/前田敏博編)" ブレーン出版, 117(1-23) (1998)