1997 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内リケッチアを用いたマラリア媒介蚊への細胞質不和合性の導入
Project/Area Number |
09270204
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 哲彦 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (60235257)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
脇 誠治 群馬県立医療短期大学, 教授 (10056286)
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Keywords | ボルバキア / 細胞質不和合 / 節足動物 |
Research Abstract |
ボルバキアは昆虫を中心とする多くの節足動物に感染しているリケッチアで、宿主動物に細胞質不和合性を誘起する。これは非感染雌と感染雄の交配で卵が発生しない不妊現象であるが、感染雌は雄の感染状況によらず交配に成功し、しかもボルバキアは母系伝播するため、感染雌の子孫は感染個体になる。このためボルバキア感染個体は集団内で分布を拡大し、この性質を利用すれば昆虫集団の置換が可能になる。本研究は細胞質不和合性の分子機構の解明と、ボルバキアを利用した新しい衛生害虫防除法の開発に向けて、異なる動物間でのボルバキアの移植を試みた。 まず、ボルバキアftsZ遺伝子特異的なプライマーを用いたPCRにより、数種の昆虫についてボルバキア感染状況を調べ、タイワンエンマコオロギ、スジマダラメイガ、スジコナマダラメイガが感染している事を明らかにした。さらにこれらの昆虫に抗生物質処理を施し、非感染ストレインを作成し、交配実験を行った。その結果、コオロギとスジマダラメイガで強い細胞質不和合性が観察された。細胞質不和合性の分子機構については、コオロギの精子タンパク質の分析を行い、感染雄と非感染雄で等電点が異なる塩基性タンパク質を検出した。ボルバキア感染に伴い精子塩基性タンパク質が何らかの修飾を受けることが示唆された。また、ボルバキア主要外膜タンパク質の遺伝子のクローニングを行い、発現ベクターを用いてこのタンパク質を多量に調製し、抗体を作成した。今後は抗体を用いて、ボルバキアの宿主内での動態を明らかにする。移植実験では、ボルバキアに感染したスジマダラメイガの卵細胞質の一部を、非感染スジコナマダラメイガの卵に注入することにより、昆虫の種を越えてのボルバキアの移植に成功した。今後は深刻な衛生害虫へのボルバキアの移植を試みる。
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