1997 Fiscal Year Annual Research Report
マラリア媒介蚊の非媒介化に必要な遺伝子の解析と体液細胞種の同定
Project/Area Number |
09270206
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 綾子 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (90272484)
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Keywords | マラリア原虫 / ハマダラ蚊 / 複眼形成 / 昆虫生体防御 / 遺伝マーカー / 体液細胞 |
Research Abstract |
ハマダラ蚊の生体防御機構からの原虫の回避機構を明らかにすることが「マラリア媒介蚊の非媒介化」の実現には不可欠である。現在、幾つかの非媒介変異体が報告されているが、その原因遺伝子はまだ同定されていない。一方で、昆虫の生体防御系が原虫にも有効である可能性が指摘され始めているが、その分子的なつながりは未明である。このような状況において(1)分子遺伝学的解析を可能とする非致死性の遺伝マーカーやトランスポソン(2)原虫の認識や排除に関わる蛋白やその抗体などを得ることが重要と考え、以下の研究を行った。 (1)複眼におけるUV受容体の形成に働く遺伝子sevenlessをdominant positiveに発現させたショウジョウバエでは複眼表面の形態が変化する。蚊の光受容体構造は形態的にはハエと同じであるので、sevenless遺伝子が蚊において存在し、同等の機能を示すならば、形態マーカーに応用できると考えた。マラリア媒介種Anopheles gambiaeよりゲノムおよびcDNAライブラリーを作成し、複眼形成に関わる遺伝子sevenlessのホモログの同定、単離を行った。塩基配列及び予想アミノ酸配列の解析を行ったところ、チロシンキナーゼ領域の11のサブ領域で、キナーゼファミリーに保存されるすべてのアミノ酸がショウジョウバエと一致した。更に、この遺伝子の蚊における発現を解析した結果、幼虫における脳半球の分裂領域及び付近の上皮組織、更蛹では分化しつつある複眼にシグナルが検出され、複眼の形態形成の初期にこの遺伝子が発現していると考えられた。 (2)昆虫体液細胞の分類および自己非自己の認識・排除に関わる分子の同定に向けて、センチニクバエ体液細胞表面へのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作成した。顆粒細胞に対するモノクローナル抗体に関しては抗体産生細胞をクローニングした。
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[Publications] Yano,T.: "Purification and characterisation of cathepsin B mRNA 3'-untranslated-region-binding protein (CBBP),a protein that repress cathepsin B mRNA translation." Eur.J.Biochem.245. 260-265 (1997)
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[Publications] Hori,S.: "Monoclonal antibodies against pupa-specific surface antigens of Sarcophaga peregrina(fleshfly)hemocytes" B.B.R.C. 236. 497-501 (1997)
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[Publications] Hijikata,M: "Inhibition of protein tyrosine kinase by 5-S-GAD,a novel antibacterials ubstance from an insect." B.B.R.C. 237. 423-426 (1997)
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[Publications] Lee,W-J.: "Molecular cloning and chromosomal localization of a prophenoloxidase cDNA from the malaria vector Anopheles gambiae"
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[Publications] 小林綾子、名取俊二: "BioDefenceシリーズ2 マクロファージと生体防御 生体防御と発生における昆虫の体液細胞の機能について" 菜根出版, 26-53 (1997)