1997 Fiscal Year Annual Research Report
シンク器官におけるタンパク質リン酸化による機能発現制御機構の解析
Project/Area Number |
09274224
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
島田 浩章 東京理科大学, 基礎工学部, 助教授 (70281748)
|
Keywords | 情報伝達系 / イネ未熟種子 / 貯蔵デンプン生合成 / 分子生物学 / プロティンキナーゼ / カルシウム |
Research Abstract |
光合成により固定された炭水化物は、植物のシンク器官(特に貯蔵器官)へ送られ、デンプンなどの貯蔵物質として蓄積される。イネ未熟種子特異的カルシウム依存性プロティンキナーゼ(SPK)はデンプン生合成が最も盛んな登熟中期の未熟種子特異的に強く発現する。SPKの生化学的性質を知るために、SPKをグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として、大腸菌での発現を試み、目的の分子量を有する融合タンパク質の生成を確認した。得られたタンパク標品は、ヒストンに対するリン酸化活性を示した。また、カルシウム依存性プロティンキナーゼ特有の性質を示した。一方、SPK遺伝子の生理的機能を知るために、SPKのアンチセンス遺伝子による発現抑制を試み、形質転換イネでの形態的、生理的変化、デンプン生合成系遺伝子発現との関係を調査した。その結果、受粉後の登熟過程におけるデンプン生合成の阻害が認められ、これらの未熟種子にショ糖を多く含む水分が蓄積した。また、以降の種子成熟過程も起こらなかった。その結果、稔実率が極端に低下した。このことから、SPKは貯蔵デンプン生合成時におけるシグナル伝達経路で、重要な役割を果たしていることが示唆された。さらに、後代の種子を栽培し、導入したアンチセンス遺伝子の遺伝を検定したところ、約半数がアンチセンス遺伝子が分離脱落個体であった。アンチセンス遺伝子の脱落個体は正常に育ち、稔実率も回復した。一方、アンチセンス遺伝子の存在する個体も、栄養成長期は正常な形態を示したが、これらの植物における種子の稔実率は、親世代と同様に極端に低いものから、正常に近いものまで様々に分かれた。このことは、アンチセンス遺伝子の存在(発現)が後代種子形成に阻害的に働いたことを示している。
|