1997 Fiscal Year Annual Research Report
線虫C.elegansの神経特異的な新規MAPキナーゼカスケードの解析
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09275210
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
久本 直毅 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助手 (80283456)
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Keywords | MAPキナーゼ / シグナル伝達 |
Research Abstract |
SAPK/JNK MAPキナーゼは、無脊椎動物から哺乳動物細胞に至るまで保存されているMAPキナーゼスーパーファミリーの一つであり、ストレス応答や細胞死(アポトーシス)、上皮細胞の運動などに関与することが知られている。我々は、SAPKの線虫C.elegansのホモログであるsak-1と、それを特異的に活性化するキナーゼであるsek-2を単離した。sak-1およびsek-2遺伝子は、どちらも線虫においてほぼすべての神経細胞で特異的に発現していた。つぎに、sek-2遺伝子の機能をあきらかにする目的で、トランスポゾンを用いてsek-2破壊株を作製してその表現型を観察したところ、sek-2破壊株は運動異常の表現型を示し、プレート上をまっすぐ前進できないことが明らかになった。また、線虫はプレート上ではサインカーブを描いて前進・後退するが、sek-2破壊株は通常の野生株と比べて約2倍の振幅のサインカーブを描いて前進・後退した。sek-2破壊株の上記のような表現型は、sek-2遺伝子をsek-2破壊株に導入することにより抑圧された。ここで、sek-2破壊株の運動異常が、神経系の発生・分化などの異常によるのか、それとも神経の機能の異常によるものかについて、ヒートショックプロモーターの下流にsek-2を組み込んだ遺伝子を用いて解析したところ、sek-2破壊株の運動異常が神経の機能の異常によることが明らかになった。 さらに、sak-1遺伝子がsek-2遺伝子の下流かどうか確かめるために、野生株とsek-2破壊株のそれぞれからsak-1蛋白質を精製して、そのキナーゼ活性を測定したところ、野生株から精製したSak-1蛋白質はキナーゼ活性があったが、sek-2破壊株から精製したSak-1蛋白質はキナーゼ活性をもっていなかった。このことから、sek-2はsak-1の特異的な活性化因子であることが明らかになった。 以上の結果から、線虫ではSak-1およびSek-2よりなる神経特異的なMAPキナーゼカスケードが存在し、正常な運動機能に必須の役割を果たしていることが明らかになった。
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