1997 Fiscal Year Annual Research Report
ウニ精子鞭毛運動におけるダイニン分子の挙動とその制御機構の解明
Project/Area Number |
09279215
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
真行寺 千佳子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (80125997)
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Keywords | 鞭毛運動 / ダイニン / 滑り運動 / 力発生 / 1分子計測 / 振動 / ウニ精子 |
Research Abstract |
細胞運動の多くは,モーター蛋白質が起こす滑り運動を原動力とする.滑り運動は,化学エネルギーを機械的エネルギーに変換することにより起こるが,このときモーター蛋白質がどのように力を発生し,力発生がどのように制御される結果,細胞の運動につながるかについては明らかにされていない.本研究では,ウニ精子鞭毛におけるダイニンに着目し,その分子レベルの機能を,新しい生理学的アプローチを用いて,制御機構との関連のもとに解明することを目指した.滑りの制御機構はinvitro系では普通失われてしまう.本研究の代表者は,最近,エラスターゼを用いることにより,ある程度制御機構を保持したままで滑り運動を起こさせる系を開発した.そこで,この系を応用することにより,上記目的を達成することを目指した.鞭毛膜を抽出後断片化した軸糸をcagedATPとともにチェンバーに入れ,エラスターゼ処理後顕微鏡下で,UV-flashによりcagedATPを光分解して滑りを起こさせダブレット微小管1本になるようにした.このダブレットに重合微小管にビーズをつけたもの作用させ,再び光分解によりATPを放出させてダイニンによる力の発生を光ピンセット法を用いて測定した.その結果,微小管をダブレットに対して45-90度で作用させると力測定が可能であることが明らかとなり,ダイニン1個の腕あたり約6pNの力発生があることが解った.この力発生に伴い,微小管が約100m変位し,それは数ms-数s維持された.このことは,ダイニン腕がprocessivemotorであることを示唆している.さらに,力と変位の振動が起こることを見つけた.振動は0.75mM ATP付近では約72HzでATP濃度の低下とともに減少した.この振動がダイニン1個の腕により起こっているとするとそれは大変興味深い.1個の腕(2つの頭部)によりどのように振動が起こるのかは不明であるが,この振動が鞭毛運動の基礎的現象であると推測される.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Yoshimura,K.: "Conversion of beating mode in Chlamydomonas flagella induced by electric stimulation." Cell Motility and Cytoskeleton. 36. 236-245 (1997)
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[Publications] Hayashibe,K.: "Induction of temporary beating in paralyzed flagella of Chlamydomonas mutants by application of external force." Cell Motility and Cytoskeleton. 37. 232-239 (1997)