1997 Fiscal Year Annual Research Report
生物分子モーターの構造・機能の1分子動態解析研究.
Project/Area Number |
09279218
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
安藤 敏夫 金沢大学, 理学部, 教授 (50184320)
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Keywords | ミオシン / ATP / 原子間力顕微鏡 / 1分子計測 / タンパク質振動 / エネルギー変換 |
Research Abstract |
分子モーターのエネルギー変換過程において分子内に何が起こっているのであろうか。エネルギー変換は分子集団のレベルで起こるのではなく、個々の分子で起こる現象である。従って、1分子の振る舞いを直接観察・計測できる必要がある。原子間力顕微鏡カンチレバ-探針に分子モーターであるHMMを1分子だけ捕捉することに我々は既に成功している。この技術を利用してATPase反応に伴って起こるHMM分子の力学応答を1分子レベルで計測することを試みた。基板にATPを固定し、探針に捕捉したHMMをそこに近づける。HMMがATPと結合して後に起こるであろう変化をカンチレバ-の撓みの変化として捉えた。予想外にもカンチレバ-の高速振動が観察された。振動数は我々のサンプリングレートでは計測できなかったが100Hz以上と見積もられた。また、振動の振幅は約2nm(力に換算すると40pN)であった。この振動がHMM分子の構造振動に因るかどうかは即断できない。そうでない可能性として、HMMがATPと結合・解離を繰り返すことが考えられる。この場合には、振動中にカンチレバ-をゆっくり引き上げられば、その引き上げ過程初期にHMMはATPから解離し、カンチレバ-は下には撓まないはずである。実際に調べてみると、引き上げ過程でカンチレバ-は下に一旦撓んだ後に撓みの無い状態になった(破断現象、破断力約15pN)。従って、振動はHMM分子が2状態間を高速に行き来することによって起こるものと推測される。カンチレバ-を2nm変位させるに必要な仕事は4kBT(T=300°K)であり、これはATPの加水分解で供給されると考えられる。振動現象は重要な事実を意味する。すなわち、ATPから供給されたエネルギーは散逸せずにかなり長い時間HMM分子に貯えられる。この新しい現象は分子モーターにおけるエネルギー変換機構の重要な側面を表していると考えられる。
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[Publications] H.Nakajima et al.: "Scanning Force Microscopy of the Interaction Events between a Single Molecule of Heavy Meromyoshin and Actin." Biochem.Biophys.Res.Commun.234. 178-182 (1997)
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[Publications] 安藤敏夫: "原子間力顕微鏡とその応用" 細胞工学. 17・3. 458-468 (1998)
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[Publications] 石渡信一 他14名: "生体分子モーターの仕組み" 共立出版, 214 (1997)