1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09301018
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
白石 太一郎 国立歴史民俗博物館, 考古研究部, 教授 (60150017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新谷 尚紀 国立歴史民俗博物館, 民俗研究部, 教授 (80259986)
上野 和男 国立歴史民俗博物館, 民俗研究部, 教授 (80062008)
高橋 敏 国立歴史民俗博物館, 歴史研究部, 教授 (80163260)
千田 嘉博 国立歴史民俗博物館, 考古研究部, 助手 (70226695)
設楽 博巳 国立歴史民俗博物館, 考古研究部, 助教授 (70206093)
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Keywords | 墓地 / 葬墓制 / 郷墓 / 墓郷 / 石塔 / 五輪塔 / 中世墓地 / 近世墓地 |
Research Abstract |
本研究は、奈良盆地に特徴的に見られ、現在急速に変貌しつつある、複数の村落の入会墓地である郷墓について、正確な現状記録を作成することを大きな目的としている。本年度は、(1)前年度に引き続き奈良県新庄町北葛城郡平岡極楽寺墓地の石塔の悉皆調査を実施し、ほぼ終了した。(2)前年度に着手した奈良県天理市中山念仏寺墓地の測量調査を終了し、石塔の悉皆調査を開始した。(3)両墓地の無銘の五輪塔の年代を追求するため、奈良盆地における造立年代の明らかな五輪塔の実測調査を行った。(4)またこれらの墓地を含む奈良盆地の郷墓やその他の墓地について、民俗学的、歴史学的、考古学的な関連調査を実施した。 調査の結果、平岡極楽寺墓地については、石塔の総数が2022基で、そのうち16世紀のものが17基、17世紀のものが74基、18世紀のものが125基、19世紀のものが101基、20世紀のものが748基、年代不明が957基あり、舟形有像・板碑形・背光五輪などから駒形・櫛形のものを経て角柱形へと変化している。年代不明の石塔には、組合五輪塔が73基以上、一石五輪塔が45基、箱仏が112基あり、中世の15〜16世紀、あるいはそれ以前に遡るものが230基近くもあり、この墓地が中世墓地を母体に成立していることを物語る。さらに石塔の造立単位については、16世紀には個人墓であったが、17世紀には夫婦と思われる組合せのものが多くなり、さらに18世紀後半以降「先祖累代之墓」が現われ、さらに大正期以降「○○家之墓」が多くなる。石塔の石材については、中世から近世初期には近くの葛城山の石英閃緑岩が多いが、近世後半になると和泉砂岩や六甲山系の黒雲母花崗岩がみられるようになり、最近では香川県の庵治石(黒雲母花崗岩)が多くなる。この他、村落ごとの墓地の利用形態、葬法、寺院との関係、さらに他の郷墓との比較などについては、次年度の中山念仏寺墓地の石塔の悉皆調査の結果を待って分析する予定である。
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