1998 Fiscal Year Annual Research Report
水の動的構造と緩和モードの超低振動数ラマン分光による研究
Project/Area Number |
09304037
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
冨永 靖徳 お茶の水女子大学, 人間文化研究科, 教授 (00013540)
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Keywords | 水 / 動的構造 / 低振動数 / ラマン分光 / 緩和モード |
Research Abstract |
この研究計画の目標は、水、水溶液系、および有機溶媒など、液体のラマンスペクトルの中心成分に観測されるTHz領域での緩和モードの正体を明らかにすることである。この問題に対して以下の研究成果を得た。 1 四塩化炭素の低振動数領域のラマンスペクトルは、原理的にCole-Cole型緩和モードで再現できない。多重二状態遷移模型(MRTモデル)に基づいた緩和関数を用いると、この緩和関数だけでスペクトルが見事に再現された。このMRT緩和関数はTHz領域で慣性効果とメモリー効果が実効的に組み入れられているという意味で、緩和に対する全く新しいアプローチである。 2 水と電解質水溶液に対して、MRTの緩和関数を用いて低振動数ラマンスペクトルを解析した結果、Cole-Cole型の緩和モードを用いた場合と同様の精度でスペクトルの再現が出来た。MRTモデルを用いた事による新しい知見として、電解質の構造形成イオンと構造破壊イオンの効果が、熱浴側の揺らぎの相関の違いとして得られた。これは、ラマンスペクトルから、熱浴側の揺らぎを得たと言う意味で全く新しい知見である。また、水に対するMRTモデルの解析結果では、50cm-1の振動モードが室温以上で消失する結果が得られた。この結果は、水の遠赤外吸収に実験結果とコンシステントであり、ラマンにおけるTHz領域のダイナミクスに対して新しい知見を与えるものである。 3 エチレングリコールに対して、超低振動数領域までラマンスペクトルの測定と解析が成功した。水や四塩化炭素と異なり低振動数領域に2個の緩和モードが必要な事が明らかにり、このうち速い緩和モードはDebye型緩和やCole-Cole型緩和の前提である、overdamped limitとnarrowing limitが破れていることがわかった。これにより、ラマンのTHz領域での緩和に対する新しい知見を付け加えた。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Y.Tominaga,A.Fujiwara and Y.Amo: "Dynamical Structure of Water by Raman Spectroscopy" Fluid phase Equilibria. 144. 323-330 (1998)
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[Publications] K.Mizoguchi,T.Ujike and Y.Tominaga: "Dynamical structure of water in Nall aqueous solution" Journal of Chemical Physics. 109. 1967-1872 (1998)
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[Publications] Y.Amo and Y.Tominaga: "Low-frequency Raman Scaffering of liquid CCl_4,CHCl_3,and acefone" Journal of Chemical Physics. 109. 3994-3998 (1998)
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[Publications] Y.Amo and Y.Tominaga: "Dynamical structure of water in aqueous solutions of LiCl,NaCl,and KCl by low-frequency Raman scettering : comparison between multide・・・・・" Physical Review E. 58. 7553-7560 (1998)
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[Publications] T.Ujike,Y.Tominaga and K.Mizuguchi: "Oynamical structure of water in alkali halide aqueous solutions" Journal of Chemical Physics. 110. 1558-1568 (1999)
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[Publications] Y.Amo and Y.Tominaga: "Possibility breakdown of overdamped limit and narrowing limit in low-frguency Raman spectra : phenomenological banashape・・・・・・" Physical Review E. (accepted). (1999)
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[Publications] 冨永靖徳: "水のラマン散乱と水素結合によるクラスター" 日本結晶学会誌. 40. 95-100 (1998)